先日のリーダーシップ研修において、お若い部長さんがポロリとつぶやきました。

「メンバーの言うことが『違う・・・』と思っても、相手との確執が怖くて自分の言いたいこと、本音を言えないんです・・・」

あぁぁぁぁぁ・・
わかるわかる、わかります。
こんなスーパーブラックだった私でも、かつて、ほんのわずかな期間ですが
こういう時がありました。

それは、専門職集団のマネージメントをしなければならなかった時です。
メンバーは皆、その分野のスペシャリスト。
保有資格もすごいですが経験値もかなりあり、プライドも相当なものです。
一方私は、その手の分野は幼稚園生並みの知識しかなく、業務経験はと言えば
「ゼロ」でした。

私がマネージャーとして挨拶した勤務初日、誰も私を上司と認めていないのが
その露骨な態度でわかりました。

はて、困りました。私の話など誰もまともに聞く耳を持ってくれません。
こんなことでマネジメントなんかできるのかしらん。
途方に暮れた私は、私をその部門にアサインした会長に相談に行きました。
「どうして私があの部署のマネージャーなんでしょうか・・・」

すると会長はニコニコしながらおっしゃいました。
「君にお願いしたいのはマネジメントであって、彼らと同じ業務のスペシャリストとしての仕事じゃないからですよ。」

なるほど!
つまり、私は専門家集団の彼らが働きやすく、かつ、彼らが最大のパフォーマンスを発揮できるようにする「縁の下の力持ち」になればいいのです。

そんな私の昔話を部長さんにお伝えするのと同時に、
リーダー研修の中でお伝えしている「トップの才覚」
三国志の項羽と劉邦の逸話をご紹介してみました。

項羽は彼自身がかなり秀でた猛将ですが、
そのために優れた将軍を信じて任せるということができない。
そのため、項羽は名だたる優秀な人材を擁していたにも関わらず、
誰一人使いこなすことができず、次々と項羽の下を去って行ってしまいました。
部下には優しい言葉をかけ、女性のような思いやりを見せることもありますが、
いざ報奨を与える段になると、途端にこれを渋ります。
これは項羽の致命的欠点です。

かたや、劉邦はなるべく戦わぬことを心掛け、
戦わざるを得なくなった時もなるべく敵に降伏を促し、
降伏をした者には所領を安堵し、功を成したものには惜しみなく報奨を与え続けた。
各地の諸侯が忠誠を誓うようになり、
与えた財が何倍何十倍にもなっても劉邦の下に還ってきた。

つまり劉邦は、「将=将才」を使うのに長けた「将の将=君才」なのです。
将才と君才とは全く別物であって、
組織のトップに立つものは特別な才能(将才)などなくても、
部下を信頼して使い、他人の利益(利他)のために尽くすこと(君才)が
何よりだということです。

ちなみにくだんの若い部長さん。
モノが言えないのは、「馬鹿にされると嫌だ」
「経験浅いヤツが偉そうにと思われたくない」
「せっかく抜擢を受けて部長になったのに失敗したくない」
などの色々な感情が邪魔をして、メンバーの皆さんと仕事以外の話も殆どしていないそうです。
相手が年上のベテランスペシャリストですので気持ちをわからなくはないです。

私のお話や劉邦のお話をした後、部長さんが笑顔でおっしゃいました。
「まずは、普通の話がメンバーとできるように、『関係の質』の向上からやってみます!」

きっとこの部長さんなら、想いがメンバーにも伝わって、良いチームを作れるのではないかと期待しています。

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