J社時代、ツアーの見積りや精算が得意だった私は、メンバーのものをチェックしたり手伝ったりしながら、よく冗談交じりにこんなことを言っていました。

「Aちゃんは絶対に不正できないよね。だって、精算ボロボロだもの。不正するにはもっといろんなことに精通していないとね。」

「Bくんはやろうと思ったら不正出来ちゃうかもね。かなりの精度で見積りも精算もできてるもんね。でも、やっちゃぁダメよ。失敗しても赤字になってもごまかしたりしないで、ちゃんと言ってね。追いつめたりしないから。」

AちゃんもBくんも、一時的に私が激怒したり呆れかえったりしても、その後、決して一人にしないのを知っていたので、彼らはミスをちゃんと報告してくていました。お陰でしょっちゅう上司には私が頭を下げる羽目になりましたが、ちゃんと言ってきてくれることはとてもありがたいことでした。

 

そういう私自身がメンバー時代にどんな社員だったかというと、そこそこ仕事ができると周囲から見られていたこともあり、その評判を落としたくなくて、ミスをしてしまったと上司に報告することがなかなかできないでいました。

「え?お前らしくないな」「どうしたんだよ、しっかりしてくれよ。他のやつらに示しがつかないだろう」

そんな言葉を聞けば聞くほど、どんどん報告しづらくなったものでした。

 

恐らく私同様、周囲からの評判を下げたくなくてミスを言い出せずに誤魔化してしまう、嘘をついてしまう、できないと言えずに困っている人は多いのではないでしょうか。それが仕事がデキる人であればあるほど、もしかしたらその傾向は強いかもしれません。

何かしら問題が起こってしまった時、その動機は「自己保身から」という話をよく聞きます。

確かに「悪く思われたくないから嘘をつく」のは自己保身以外の何物でもありません。しかし、そのように追い詰めない、そうさせないちょっとした心配りも上司には必要なのかもしれません。

 

私が「できない」「ミスった」と素直に周囲に言えるようになったのは、自分の評判が落ちたからではなく、その時の上司が本当はものすごく仕事ができる人でほぼ完璧に近い人であったにも関わらず、全くその様子を部下たちには見せず、分からないことや知らないことを私たちに質問してくれたり、私たちに色々な事を相談してくれたり、「あぁ、この人には飾らない自分でいていいんだ。何を報告しても大丈夫な人なんだ」と思えたからでした。

仕事ができると評判の人ほど、実はその心の内は様々な葛藤が渦巻いて孤独でいるのかもしれません。仕事ができる人が保身のために嘘をつくのは、その孤独の裏返しの行動なのかもしれません。

デキる人はたいていの場合、ほったらかしにされがちです。もちろん、ほっといてもできるのですから権限を委譲してどんどん頑張ってもらって良いのです。

しかし、「好きにやっていいぞ。何かあったら責任も自分で取れよ。」と言うのと、「最終責任はこちらが負うから自由にやっていい。但し、報告だけは何があっても絶対に嘘をつくな。」と言うのでは、メンバーの心の余裕は天と地ほども違います。

 

デキる人ほど嘘をつく。それは孤独の裏返し。

デキる人だからとほったらかしにするのではなく、「ちゃんと見ているよ」「いつでも頼っていいんだよ」「ココは100%安心安全な場なんだよ」と常にメッセージを送り続けることが大切ですね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です