個人的大事件が起きてしまい、ちょっとしたパニックになってしまった私。
ところが間が悪く、そういう時に限って、普段上手くいっていることに支障が起きたりするもので、車のカードキーが作動しなくなってしまいました。

急いでいるのに。一刻を争うのに。
慌ててエマージェンシーに電話をかけると若い男性が電話口に出てきました。
「カードキーが壊れているのか、車がおかしいのか、作動しないんです。」
半ばパニック状態のまま早口で言い立てる私に、電話の向こうの相手は無感情な声で冷たく突き放すように言いました。
「故障の電話はこちらではありませんので、今から言うフリーダイヤルにおかけ直しください。」
ますますパニックになり頭はごちゃごちゃになる私。
「1分1秒でも惜しいこの時に、電話をかけ直せだなんて。私は故障の訴えをしているんじゃないのに。最後まで人の話を聞きなさいよ!」
と心の中で毒づいてしまいましたが、ここでケンカしても意味がありません。
必死で深呼吸を二回した後、怒りとイライラとパニック原因への緊張と心配とでゴチャゴチャになった震える声を落ち付かせ、何とか最後までこちらの用件を伝えることができました。
その間も、電話の向こうの男性は、こちらの慌て具合など全く意に介さないという調子で、ただただ無感情に言葉を重ねます。
「こちらの手続きでは・・・」
「コンピューター上では・・・」
「お客様が勘違いなさったのだと思います。」

なんでもない時であれば、「失礼なコールセンターだなぁ」と相手にせずに済むのですが、とにかく稀に見るパニックに陥っていたため、相手の無感情な声が、いちいち私の感情を逆なでしました。
必死に自分を押さえ、用件を伝え、電話を切った時には1000mを全力疾走したくらいの疲れを覚えました。

コールセンターには様々なお客様から電話がかかってきます。
クレームもあれば、わけのわからない内容もあるでしょう。
どの様な時にも冷静に応対するようにとマニュアルにあるに違いありません。
私でもそのように指示すると思います。

しかし!
冷静と無感情は違います。
冷静とは感情に左右されることなく落ち着いて物事の判断をし、行動すること。
無感情とは、一切の感情を排することです。
つまり、相手の感情を無視して冷静な対応をすることは、相手の感情を慮りながらも冷静に対応することとは天と地ほどの違いがあるということです。

その違いをちゃんと教えようよ。コールセンターの責任者さん。
お客様の感情に寄り添う事は、時としてどんな完璧な対応よりも大切だという事を知っておいた方がいいよ。
平静を取り戻した私は勝手ながらそんなことを思いました。

昔々の話ですが、韓流スター全盛期、冬のソナタが大流行りだった頃、冬ソナで大人気の俳優さんに会いに韓国へ行くというファンクラブツアーの仕事をしていました。
ゆかりの地を観光した後、俳優さんを囲んだパーティで記念写真も撮れるというもので、日本全国から予想を上回る参加応募があり、抽選で参加者を絞りました。
ところが、落選した方からクレームの電話が何本かかかってきたのですが、お一人、強烈な方がいらっしゃいました。
抽選は不正だからやり直すようにとか、旅行会社だからとファンでもないあなたが俳優さんの近くにいるのは許せないとか、とにかく理屈がすごく、電話応対していたスタッフから私に泣きが入りました。
全くおばちゃんだなぁと思い、はいはいと応対していた私ですが、延々と30分以上も続く彼女の言い分に、私も疲れてきてしまったのです。
クレームはとにかく話を聞くこととマニュアルにあるものの、30分以上も続いているのです。
それに、こんなに訴え続けるほどに大ファンなのだと思うと、ほんの少しだけ可哀想になりました。
「本当に残念でしたね。私も大好きな千春さんのファンクラブツアーに何回も落選しているんで、お気持ち、痛いほど分かります。悲しいですよね。悔しいですよね、本当に。」
ついつい、そんなことを言ってしまったら、そのおばちゃん、「あんた、松山千春のファンなん?変わっとるねぇ。でも、あんたも大変やね。頑張って。」と言いたいことを言って電話を切りました。
意識して相手の感情に寄り添った訳ではありませんが、この時、学んだのです。
人の気持ち・感情は理屈ではない。その気持ちに理解を示すかどうかは、相手にとって本当に大切な事なんだということを。

それにしても、いくらパニックになっていたとはいえ、未熟(敢えてそう言います)な担当者を心の中で毒づいた私は、私の方こそまだまだ未熟であると、深く反省した次第です。
口に出して言葉にこそしなかったものの、心の中で相手に対して抱いたネガティブな感情は、私の言葉を毒々しい色に染めてしまったに違いありません。
いついかなる時も、穏やかに、温かにというのは、かくも難しい事かと思いました。
日々是修行でございます。

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