先日のお茶のお稽古でのお軸は「紅爐一點雪」(こうろ いってんのゆき)でした。

 

紅蓮の炎を上げて赤々と燃えている炉にひとひらの雪が舞い落ちる。

一瞬とも言えぬほどに白い雪はシュッと解け落ち、その跡形さえも残らない。

生きている間、人は多くの煩悩に捉われているが、死を迎えるその瞬間においてはせめてあれころと思い残すことなく、このひとひらの雪のように美しく消えていきたいものだという死生観を現した言葉だそうです。

 

しかし人間、死を目前として「思い残すことは何もない。」「生き切った」と簡単には言い切れないのが実際のところ。いったいどうすれば、そのように生きることができるのでしょうか。

それは、一日一日を精一杯生きること。明日でいいや、そのうち何とかなるや、と今この一瞬から逃げるのではなく、その瞬間瞬間を大切に生きるということです。一日を終え床に就くとき、「今日も精一杯生きた」と思えるかどうか。その日々の積み重ねが大切なのだと先生から教えていただきました。

富める者と貧しき者、日本人と外国人、男と女など、様々な違いはありますが、生きている全てのものに共通するのは、この世に生を受けたその瞬間から死へ向かっているということ。日常において、死を考えざるを得ない状況に陥らない限り、私たちはそんな当たり前のことを忘れてしまっています。

死を意識して生きるということではなく、命は限りあるもの、だからこそ日々を精一杯生き切る、

そんな大切なことを思い出させてくれたお軸でした。

 

 

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