マネージャー同士が仲良しのA・B・Cチームは、いずれも若手メンバーばかりの少人数で仕事上の接点が多く、メンバー同士も気心が知れて互いに言いたいことを言い合える関係性です。

あるプロジェクトの件で、AチームのTさんとBチームのKさんは真剣な話し合いがエスカレートし過ぎて、周囲から見ているとハラハラする状態に度々陥るようになりました。
傍から見ていて、一触即発でマズいのではと思われる状態になることもしばしばありました。
大抵の場合は、TさんにはTさんのMマネージャーが、KさんにはKさんのSマネージャーが注意を促すと、促された方は冷静になり、すると自然に二人とも笑い合って元通り、穏やかになるのです。

ある時、TさんとKさんの激論が交わされている時、その場にいたのはCチームのYマネージャーだけでした。
Kさんの激しく尖った口調に「これはちょっと」と感じたYマネージャーは、Kさんに対して優しく注意をしました。
「前向き討論は大歓迎だけど、言葉遣いが少し乱暴に感じるぞ。」

その時、そばを通りかかったSマネージャー。
SマネージャーはYマネージャーにお礼を言ってKさんに自らも注意を促しますが、その後、Yマネージャーの顔を見ず、後から通りかかったMマネージャーにも目を合わせず、なんだか少しよそよそしい感じでした。

Mマネージャーは「気のせいじゃないの?」と言うものの、YマネージャーはSマネージャーの様子が気になって仕方がありません。
何かマズいことを言っただろうか・・・
それとも他に心配事があったんだろうか・・・
自身のモヤモヤを閉じ込めておくことができないYさんは、Sマネージャーに思い切って聞いてみることにしました。

「さっきのことだけど。
Sマネージャーの姿がチラリと視界に入ったんだけど、私がKさんに先に言葉を掛けてしまって、Sマネージャーに嫌な思いをさせてしまったんじゃないかと思っているんだけど・・・。
出過ぎたことで、申し訳ない・・・。」

すると、Sマネージャーから返ってきた言葉はYさんの予想に反したものでした。
「いやいや、Yさんのせいじゃなくってね、自分に腹が立ったというか・・・。
Kさんの言葉の荒さは気になっていて、前々から注意しているんだけど、上手く指導しきれていなくって。
Mマネージャーも何も言わないけど、たぶん、『おいおい・・・』って思っているんじゃないかと感じてるんだ。
YさんがKさんに注意してくれた時、自分の指導力のなさを指摘された気がして、いや、勝手にそう思っただけなんだけど、恥ずかしかったというか、自分に腹立たしかったというか。
けど、かえってYマネージャーに気を使わせてしまって申し訳なかったですね。
事実だし受け止めないと・・・。
僕もYマネージャーみたいに柔らかに、けれどもKさんが前を向けるような言葉のかけ方、もっと学んでいきますよ。」

Sマネージャーの言葉を聞いてYマネージャーは次のように感じました。
「良かれと思ったことでも、全く予想外のことで他人を傷つけてしまっていることがある。
Yさんは自分の問題だと言ったけど、私の言動がきっかけでYさんに嫌な思いをさせてしまったことは確かだ。
きっと他にもこういうことはたくさんある。
知らずに誰かを傷つけている。気づかずに誰かを悲しませている。
誰かに対して良い行動でも、別の誰かを結果的に傷つけてしまっているかもしれない。
物事の側面だけを見て良い悪いを判断するのではなく、別の側面もあるのだというを、決して忘れてはいけないんだ。」

自分が情けなかった、悔しかった思いを正直に吐露できるSマネージャー。
「なーんだ、そんなことか」で終わらずに、起きた事柄から更に深い学びを得ることができるYマネージャー。
どちらも奢ることなく、しっかりと自分自身のあり方を見つめて、とても素晴らしいですね。

どんな時にも物事には自分には見えていない側面があることを忘れずにいたいですし、どんな自分もしっかりと受け止め、それが情けない自分であったとしても前を向いて進む真摯さを持ち合わせたいものです。

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