「まず、お客様と仲良くなって来い。男女問わず、年齢問わず、肩書も関係なく、お客様とお友達になって来い。どうやったら友達になれるかは自分で考えろ。知識はまだなくて旅行の説明はできなくても、友達にだったらなれるだろう。」

社会人1年目の私が上司から与えられた最初のミッションは、一個人としてお客様とお友達になるということでした。

当時、仕事に必要な知識も情報も全く身についていなかった私は、上司の言葉にホッと胸を撫でおろしました。

良かった~。難しい説明しなくていいんだ。お友達だったらなれるかも。

そして、来る日も来る日も、Aさんとお友達になるには、Bさんとお友達になるには、と考え行動していました。仕事の話を全くせず、それでも楽しそうにたびたび訪問してくる新入社員を、当時のお客様方は不思議に思われたことと思います。

 

いつの間にか、私がお伺いすると、仕事の手を止めて息抜きに奥様のお話やお子さんのお受験問題についてお話をして下さったり、趣味の話をして下さったり。お茶やお菓子を頂きながらお客様のお話を聴き、残業中のおやつにとお土産まで頂いて帰るようになりました。また、棚卸の真っ最中に訪問してしまい、それを一緒に手伝ったり、お客様が一人では訪問しづらいお得意様へ何故か一緒に伺うことになり、訳も分からず2-3時間をその訪問先で過ごしたこともありました。

 

そんな日々が半年近くも経った頃、仲良しになった某金融機関のM課長がおっしゃいました。

「お得意様向けにプランを提案してほしいんだけど、詳しい概要を説明したいから、今度、上司と一緒に来てくれるかな。この仕事、尾藤さんに頼みたいんだよ。これまで一生懸命通ってくれて、どんな人だか分かったから。ただ、まだ新人だし君には難しい仕事だと思う。だから上司を連れてきてくれるかな。でも、あくまでも発注は尾藤さんにだからね。」

 

まるで、狐につままれたような感じです。楽しくお茶とお菓子を頂きながらお話を聴いていただけなのに、お仕事を頂けた。その時、なぜ、「お友達になれ」と上司が私に言い続けてきたのかが初めて分かりました。

新人の私が小手先でいろいろと説明をしても、所詮は知れていて、場合によってはお客様の方が知識が豊富だったりします。お客様が私に求めているのは誰にも負けない業務知識ではなく、信頼して任せるに足る人物かどうか、ということだったのです。

仕事は一人でするものではなく組織で行うもの。私がお客様との信頼関係を作り、専門的な事は組織のプロフェッショナルと一緒に対応していく。それでいいんだ、とわかったのです。

 

当時、支店のいくつかあるスローガンの中で、最も私が好きだったのは

「自らを売れ 信頼を得よ それがセールスだ」

です。ずっと大切にしてきた言葉です。

ただ、今は少し表現が異なります。

 

自らを売れ 信頼を得よ それがビジネスだ

 

 

 

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