「時間がないんです」
そう呟くNさんは、メンバー15人を抱える今年4月に管理職になったばかりの若手のホープです。
何の時間がないのか尋ねてみると、メンバー全員の仕事の状態をまだ把握し切れておらず、ゆっくり話をしたいと思いながらもその時間も取れないとの事でした。
評価時だけでなく日常においてもメンバー間とのコミュニケーションを大切にしたいというNさん。

「全員の仕事の状況をNさんが細かく把握する必要があるの?」
原点に戻る質問をしてみました。
コミュニケーションの質を上げてメンバーとの関係性をより密なものにしたいという気持ちはわかりますが、メンバーの仕事の状態を一から十まですべてNさんが把握しようとすることに15人という人数を考えた時、物理的に無理があるように感じました。

「すべてをNさんがやるんじゃなくて、別に方法は考えられない?」

するとNさんの答えはこうでした。
「以前アドバイス頂いたように、『自分の代弁者を作る』『リーダーを育てる』があると思います。
3つのグループに分けて、それぞれリーダーにメンバーの把握をしてもらって、僕はリーダーから話を聞くだけにすれば時間の短縮はできますし、把握することは可能です。」

「けど、それじゃあダメってこと?」

「自分で全部やりたいんです。自分で確認したいんです。」

「その心は???」

「他人に任せたくない。自分でやりたいんです。」

「メンバーを信じていない?」

「そうではなくって・・・。自分で全部やりたいんです。」

「時間をかけてでも全部自分でやることに意味があるんだったら、それができるんだったらそれでもいいと思う。
ただ、マネージャー経験がNさんよりは多少ある私から余計なアドバイスをさせてもらうとね。」

するとNさんは「威圧感、ありありです」と苦笑いして、それでも話を聴く姿勢を取ってくれました。

「リーダーでもできる仕事。Nさんじゃなきゃできない仕事。そこのすみわけができないと、時間はいくらあっても足りない。
任せることは相手への信頼。すべてを自分でやろうとするNさんは優秀なんじゃなくて自分たちを信じていないというリーダーたちへのメッセージのもなり得る。
そして何より、全部自分でやりたいというのは『純粋な思い』なのか『エゴ』なのか。
厳しいようだけど、単なる『エゴ』だとしたら、それは裏目に出る時が必ずくるからやめた方がいいと、私は思う。」

Nさんは黙って話を聴いていましたが、
「純粋な思いかエゴかと聞かれたら、エゴなのかもしれません・・・」
と残念そうに呟き、考え込んでしまいました。

全部を自分でやりたいというNさんの気持ち、私は痛いほどよくわかります。
私自身もそうでしたから。
なかなか他人に任せることができず、自分で自分の首を絞めることも度々ありましたし、全部自分でやることで、自分のパワーを他人に示したような気になっていたこともありました。
つまりはエゴの塊だったわけで・・・

純粋な思いであれば、どんなに大変でも『頑張れ!』と応援します。
しかし、そこにほんの少しでもエゴが見え隠れするのであれば、もう一度、取るべき行動を再考した方が良いのではないでしょうか。

Nさんの結論はまだ出ないようです。
新任マネージャーですから失敗することもあってもいいのかもしれません。
Nさんがどんな結論を出すのか楽しみに待ちたいと思います。

2019年07月16日

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