「誰だって、いっつもいっつも、正攻法ばっかりじゃないでしょ!時と場合によっては取らなきゃいけない手段だってあるんじゃないですか!?」

怒りにまかせそう叫ぶAさんに、マネージャーのKさんは頑として首を縦に振りませんでした。
前任者が何を考えて取った行動なのか今となっては不明なのですが、お客様先に納品された物品が「完璧」ではないことにAさんは気が付き、頭がパニックになったのです。
今の基準であれば標準装備がごく一般的なものがそれには装備されていない。
しかし、装備されていないからといって不良品というわけではない。
それは設備に不具合(故障)が起きない限りお客様にはわからないことで、黙っていたからと言って、当面何も起きない。
今、その装備を設備に入れようとすると新たに費用が発生する。
その費用を自社で負担するのか、お客様に請求するのか、それとも知らん顔して何もしないのか。
そもそも、その標準装備を入れると約束した仕様書はどこにもなく、お客様は何も気づいていないのだから、わざわざ寝た子を起こす必要はないのではないか。

営業担当者のAさんは、問題を自ら告げることでお客様の信頼を失うのが恐ろしく、このまま黙ってやり過ごすことをKさんに懇願したのでした。

「目先の損得に惑わされてはいけない。最終的には正攻法に勝るものはないと僕は信じている。
お客様には正直に現状をお伝えして、再装備の工事をさせていただくようお願いしよう。
費用はこちら持ちだ。」

「けれども工事期間中、数時間とはいえシステムはストップしてお客様へ迷惑をかけます
。前任者のミスを、なんで僕が尻拭いしなきゃいけないんですか!」

「それでもちゃんとお伝えして、装備をさせていただくんだ。
前任者とかA君がとか誰がではなく、会社としてのスタンスだ。
それがプロとしての僕たちのあり方だ。
嘘やごまかしは、いつか、必ず悪い形となって返ってくる。
正攻法で行くんだ。」

マネージャーの決定に逆らうことができず、Aさんは渋々ながらにお客様に状況を説明し、納品が完璧でなかったこと、再装備の工事のためにシステムの一時的中断をしなければいけないことを丁寧にお詫びし、再装備のためのスケジュールや手続きについての概要を説明しました。

お客様からどんなお叱りを受けるのか、出入り禁止になってしまうのではないかと終始ドキドキだったAさんですが、Aさんの予想に反してお客様はAさんを丁寧にねぎらってくださいました。

「さすがだね。どうもありがとう。
僕ら素人には皆目見当がつかないことだから黙っていてもわからないことなのに、真摯で丁寧な対応をしてくれてどうもありがとう。
これからもAさんに担当してもらえると、とてもありがたい。信頼できる営業さんで良かったよ。」

お客様の言葉にすっかり感激してしまったAさん。
Kマネージャーの「正攻法に勝るものはない」の意味を身をもって体感したのでした。
それ以来、Aさんは「プロとしての仕事はどういうものか」を常に自らに問いかけ、どんな時にも逃げずに正攻法で向かおうと、心に誓って営業活動に勤しんでいます。

2019年08月12日

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