「尾藤さんは僕らの仕事分からないから、的外れな質問するんですよ!」
そう口を尖らせて不満を訴えるのは、メーカーで海外営業チームを率いるSマネージャーです。
北米チームは残業がとても多く、メンバーのESも他部署と比べると著しく低いということで、なんとかならないかとご相談を頂いたのでした。

「だからいいんだよ。知らないからトンチンカンかもしれないけど、そのトンチンカンがイノベーションを生むんだよ!」
嬉々として言い返す私にSさんは面食らった表情です。

「だって、いっつも同じメンバーでいっつも同じような話をしていて、けれども解決手段が
見つからないというか、打つ手がなくて困ってるんでしょ?
つまりそれは、風穴を開ける必要があるということだよね。
そんな時、事情を知っている人じゃなくて、全く何にも知らない人の方がいいんだよ。固定概念ゼロだからね。
アクションラーニングでは、そういうのを『ピザ屋の質問』と言うんだけど、会議が行き詰ってどうしようもなくなった時、デリバリーに来たピザ屋のお兄さんに会議の話を聴いてもらい、分からないことがあったら質問してねとリーダーが頼んだの。それでピザ屋のお兄さんは素朴にわからないことを質問したところ、あまりにもシンプル過ぎて、メンバーの考えには全く及ばなかったところに気が付くことができて、そこからブレイクスルーが起きたと。
つまり、ピザ屋の質問がチームを救ったってわけ。
あながち、今の私はそのピザ屋のお兄さん。」

「・・・・」

「『知らないからそんなこと言うんですよ』と言った時点ですべては終わっちゃう。
子供のなぜなぜ質問に窮するのは、そんなこと考えたこともない事を聞かれて答えがわからずに戸惑うからだよね。
事情を知らない人の素朴な質問は、ある意味そんな感じ。
当たり前を当たり前と思わずに考えなおすことが、今の行き詰まりを打破するきっかけになると思わない?」

あまりにも私がピザ屋ピザ屋と言うもので、Sマネージャーは「腹が減った・・・」と言いながらも、私のトンチンカンな質問に付き合ってくれました。

残業が多い理由は?
会議が多いのは数? 時間? 両方?
それらを止めたらどんな弊害があるの? 代わりの手段は何が考えられる?
部長の都合じゃなくてメンバーの都合を優先すると何が起きる?
欧州チームのやり方をそっくり真似したら何は上手くいって何が困るの?
北米チームは時差キツそうだけど、どうしたら楽になるの?

そうこうしているうちにSマネージャーはチームメンバー数人を呼び込み、いつの間にか私のトンチンカン質問をきっかけとしたチームミーティングに様変わりし、デキないと思っていたことや必要だと思っていたことが実は思い込みであり、変えたり無くしたりすることもアリだとの考えに変わっていきました。
新たに斬新なアイデアもいくつか出てきて、それらについては早々に練り上げていくことになりました。

「ピザ屋、スゴイっすね!」
嬉しそうなSマネージャー。
「経理でも総務でも、工場の人でも、誰でもいいんじゃないですか。
僕らが『知らない奴らはわからない』と決めてかかるんじゃなくて、『知らない奴らの疑問が宝』とちゃんとわかってればいいんですよね。」
メンバーの一人がそう返します。

全くその通り。
知ってる同士の話し合いではなく、全く知らない人からの質問が貴重なのです。

そう言えば・・・
私が起業して間もなく、
「インフィニティは何の会社?」
と父から訊ねられたことがありました。
あまりにもシンプルな質問でしたが、人事とか組織開発とか、そういうことは全く無縁の昭和一桁世代に説明するのはなかなか難しく、私は答えに詰まって最後はギブアップ。
そこから大切な気づきを得たことがありました。
お客様みんなが一定の人材開発・組織開発とは何ぞやという基礎知識があるわけではなく、全く何も知らないわからない人にでも膝を打つくらいわかりやすく説明できなくては十分とは言えない。
そう気がついたのでした。
考えてみれば、私にとってのピザ屋は父だったのです。

あなたやあなたのチームが行き詰った時、精通した人にアドバイスを求めるのも一つです。
しかし、時にピザ屋を探してみませんか?
あなたが気がつかない視点・観点での質問に、あなたの頭には爽やかな風が吹き抜けるかもしれません。

2019年08月23日

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