若手営業マンのKさんは新規営業が得意でお客様からの評判も良いのですが、先輩から引き継いだお客様からは、小さなご指摘を頂くことが時折見受けられます。
「元気なのはいいけど、慎重さに欠けるんだよね。」

そんなKさんが、昨年先輩から引き継いだお客様から創業〇〇周年プロジェクトに関わる大きな案件のご相談を頂きました。
「E社の経営企画部長Hさんから話があったんです!」

とても嬉しそうに話をするKさんですが、Iマネージャーは心配になりました。
「このままKさんだけに任せておいて大丈夫かな。だいたい、あいつはお調子者だから、気難しいH部長とちゃんと話ができるんだろうか・・・」

Kさんの報告を聞きながらもどんどんと心配になってきたIマネージャーは
「企画書出す前に、一回、H部長のところに僕も連れてってよ。」
とKさんにリクエストしました。
Iマネージャーからの同行リクエストに、「わかりました」とKさんは答えました。
しかし、E社訪問の営業レポートはKさんからしっかり上がってくるものの、同行日時に対する相談は一向にありません。
しびれを切らしたIマネージャーはKさんを捕まえてもう少し具体的に依頼をします。
「正式企画を出す前に、僕をH部長のところに連れてってよ。よりキッチリした企画書出すためにね。〇日と△日はダメだけど、それ以外なら調整するからアポ取って。」
Iマネージャーからの具体的リクエストに、Kさんはまたしても「わかりました」と答えたのですが、その後もアポイントを取る様子はありませんでした。

いよいよ我慢の限界に達したIマネージャーはKさんを別室に呼び出して何故アポを取らないのかを問い質しました。
「こんな大きなプロジェクトの企画なんだよ。しかもあの切れ者で難しいH部長が相手だろ。早く連れてけよ。どうしてアポ取らないんだよ。」

するといつもは柔和なKさんですが、この時はムッとしながらIマネージャーに反論したのです。
「つまりそれは、僕じゃダメだからIさんを連れていけということですよね。僕はちゃんとレポートで細かく報告しているし、ちゃんと相談を都度都度しています。けれどもIさんと一緒じゃなきゃダメだって、それはつまり、僕を信用していないってことですか?僕だとH部長の相手をできるわけないから、プロジェクトも失注する可能性大だから、だからIさんを絡ませろということですか?」

Kさんの物凄い剣幕に驚いたIマネージャーですが、Kさんの言い分はまるで図星でした。
見透かされているんだったら仕方ないとばかりに開きなったIマネージャーは、Kさんの剣幕にムッとしたこともあり、言わなくてもいい一言を言ってしまったのです。
「他のお客様からも『Kはお調子者だから』とお小言頂いているじゃないか。H部長、そういうの、一番イヤなタイプの人だろう!」

言ってしまってから「しまった・・・」と思ったIマネージャーですが、時すでに遅し。
Kさんの表情は凍り付き、身体は怒りで小刻みに震えているようでした。
「つまり、経験不足で手に余る案件だからフォローするとかじゃなくて、僕のキャラクターがダメだからということなんですね!」

「いや、ダメということじゃなくて・・・。Hさんとの相性が・・・」

「H部長との関係性はいたって良好です!」

慌ててその場を取り繕うIマネージャーですが、Kさんはバタンとドアを閉めて部屋から出て行ってしまいました。

「やってしまいました・・・・」
すっかり途方に暮れて相談にきたIマネージャー。
「何がまずかった?」との私の問いに、「言わなくてもいい事を言ったから・・・」と答えたものですから、「そうじゃないんじゃない?」と私から思いっきりのダメ出しをもらう羽目になりました。

「Kさんは隠し事するでも嘘をつくでもなく、レポートでも口頭でも適時適切に報連相をしていたんだよね。
けれど、「お調子者だから」というIさんのKさんへの人的評価がその報連相をなかったものにするくらいに、そしてそれがKさんにも伝わって、仕事の実力とは違うところで自分が評価判断されているところに反発したんじゃないのかなぁ。」

「だって、あいつ、本当にお調子者なんですよ。これまでもそれでお客様からお叱り頂いているんですから!」

「そうだね。けど、今回もそうかどうかは分からないじゃない。それに、これまでそういうお叱りを頂いていることはKさん自身が一番よく分かっているんじゃないの?同行を強要することが必要なことだったの?」

「失注したら元も子もありません!」

「Kさん自身を否定しても受注できればそれでいい?」

「そんなことは言っていません!」

「何がKさんをそこまで怒らせたんだろうね?」

「・・・。報連相へのアドバイスがいい加減で、同行させろとばかり言っていたこと。自分が何とかしないとKに任せておいてはこの案件は取れないと思ったから。」

「Kさんじゃぁ、ダメだと?」

「はい。」

「Kさんは全然まるでダメ?」

「そうは言っていません。けど、心配だったんです。Hさんを怒らせてからでは遅いんで。」

「Kさんはどう感じていたんだろう?」

「ちゃんと報告も相談もしているのに、まともなアドバイスも提案もなしに、同行させろの一点張りで、イヤだったと思います。担当者意識が人一倍強いヤツですから。上司に信用されていないと思ったんだろうな・・・」

「技術やスキルが未熟なのは仕方ないけど、営業マンとして信用されていないと感じたなら、それは寂しい、辛いね。」

「・・・・。実際、信用していませんでした。受注したい気持ちが前面に出てしまって、Kの気持ちまでまるで考えていなかった・・・」

「Kさんの気持ちを汲んだうえで受注に向けて行動するにはどうしたらいいんですか?」

「もう一度、ちゃんと丁寧に話し合います。その前に、Kに謝らないと・・・」

その後、Kさんとのミーティングを改めて持ち、Kさんとしっかりと話し合ったIマネージャー。
「もっと僕のコト、信用してくださいよ。まあ、お調子者は確かですけどね。」
笑顔のKさんに救われた思いです。
そうして、その後は必要に応じてIさんが同行はするものの、Kさんを全面に出してのH部長への提案は見事受け入れられ、E社のビッグプロジェクトを受注することができたのでした。

「御社にお願いします!」と決定の連絡をH部長からもらった時、併せてこんな言葉が添えられていました。
「担当はK君でね。僕が彼をビシバシと鍛えてあげますよ!」

IマネージャーとKさんの奮闘は、H部長にもしっかりと伝わっていたのかもしれません。

2019年09月10日

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