近所にあるいつもの病院へ行った父から電話がかかってきました。
「あのね、家へ帰るの、どうやって帰ったらええんかいねぇ。」
明るい口調ではあるものの、帰り方がわからなくなった不安感が父の声から感じられました。
「病院を出たら右へ行って、それから最初の角をまた右へ行ってね・・・」
私が説明しても全く無反応な父。
「右ってわかる?お箸持つ方の手よ。」
すると父はか細い声でこう言ったのです。
「どっちで持つんだったんかいねぇ。右と左と、分からんようなったわ。」

一人で帰ってくるのは難しいと判断した私は、用事を中断して迎えに行くことにしました。
丁度その時、病院からは3kmほど離れたところで所用中でした。
最近全く走っていない私ですが、こういう時には不思議と走れるものです。
全くのノンストップで病院まで走って行くことができ、待合室で小さくなって座っている父の姿を見つけた時には、ハアハア息を切らせながらも思いっきり明るい声で「お待たせ~。帰ろう!」と父に言いました。

「ごめんよ。ごめんよ。」と何度も私に謝る父。
しかしその時、私はこんな風に感じていたのです。

帰り道が分からなくなったと気づいてくれてありがとう。
電話をかけようと思ってくれてありがとう。
私にSOSしてくれてありがとう。
左右が分からないと教えてくれてありがとう。
病院で待っていてくれてありがとう。
私に父の役に立つ機会を与えてくれてありがとう。
ありがとう。ありがとう。
あなたのお陰で今日も私は感謝をすることも、感謝されることもできました。

仕事でも、例えばちょっと難しいお客様であっても、いつもトラブルを起こしてくれるメンバーでも、こんな風に思うことができたならどんなにか良いでしょう。
感謝は自分も相手も幸せにします。
身内だけでなく、誰にでもどんな時にも感謝に溢れる人でありたいし、感謝してもらえる自分でいたい。

認知が進んだ父からまた一つ、大切なことに気づかせてもらいました。
いくつになってもあなたから学ぶことはまだまだたくさんです。
ありがとう。ありがとう。ありがとう。

2019年11月12日

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