今では航空券は電子化されたEチケットが普通ですが、昔は紙チケットが当たり前。しかも、国際線の場合は手書き航空券でした。

旅行会社時代、私の最大の失敗はこの手書き航空券がもたらしました。

 

航空券に「予約OK」と書かれているのですが、実際には手違いで手配されておらず、その確認を自分ではしないままお客様に航空券をお渡ししてしまったのです。

しかもそのお相手は、当時、日本商工会議所会頭を務められた某企業のトップご夫妻。

予約はできていないので、当然、空港カウンターでトラブルになりました。

空港からお怒りの声でお客様が私に電話をおかけになったのですが、その怒りは私ではなく航空会社に向けられていました。

「予約が取れてないだなんて、航空会社はバカなことを言っているんだ!」

事情を聞いた私は、その時点でこちらのミスとはまだ気づいていなかったのですが、とにかく、お客様に予定していた飛行機に乗っていただかないと後々のご予定に支障をきたし大変なご迷惑をおかけしてしまうと、航空会社との交渉を行いました。

ところがその便は全席満席。しかも最終便。ある国際会議を終えて移動をするフライトで、お客様は空港へいらっしゃいましたが、私は会議終了後の跡片付けやなんやで、お客様からの電話は事務局を設置していたホテルのバンケットルームで受けたのでした。

航空会社の職員は満席だからどうしようもないの一辺倒。電話では埒があかず、私はタクシーを飛ばして空港へ向かいました。途中、思いつく限りの人たちに片っ端から電話をかけ、事情を話し、とにかくご夫妻を予定していた便にお乗せしたいので助けてほしいと懇願しました。

 

空港へ着いたのは当該便出発予定時刻の10分前。チェックインカウンターに立ち寄っている暇などありません。ご夫妻がその時点でどこにいらっしゃるのかもわかりません。

私は出発ロビーのあるフロアーに駆け上がり、職員の静止も振り切って搭乗口めがけて必死に走っていきました。しかし、あえなく御用。警備員に両腕をつかまれ囚われの身に。血相を変えて飛んできた航空会社の方が私の顔を見て、半ば呆れて、しかし笑顔でおっしゃいました。

「ご夫妻はご予定の便にお乗りいただきましたよ。もうすぐ離陸です。事の顛末は改めて営業の者を通じてお話させていただきます。それにしても尾藤さんのしつこさにはまいりました。」

 

安堵と共に腰が抜けて直ぐには立ち上がれませんでした。

後で聞いた話ですが、ホテルの方をはじめ、地元の有力者、私がタクシーからSOSをした方々、多くの方達が、その短い時間に一斉に航空会社に連絡をし、「とにかく夫妻を予定便に乗せてほしい」と懇願いただき、航空会社の方が例外中の例外として、ご夫妻がお乗りできるように特段の配慮をしてくださったそうなのです。

 

後日改めて会頭ご夫妻にご挨拶にお伺いした際、あれは航空会社のミスではなく私のミスだった旨を正直にお話しし、ご迷惑をおかけしたことをお詫びしました。

すると会頭がおっしゃいました。

「空港で電話をした時、正直、どちらのミスかはわからなかった。しかし、離陸直前、パーサーから尾藤さんが空港セキュリティを静止を振り払って突破しようとして捕らえられたと聞いた時、そこまで必死で対応しようとしてくれる人ならば、事の顛末がどうであれ、これからもお願いしようと思った。立派な前科一犯だね。」

本当にありがたく、涙が止まりませんでした。

 

どんなに窮地に追い込まれても最後まであきらめず、自分のミスを他人に押しつけず、お客様の事を思ってなりふり構わず行動することの大切さを深く学んだ、ほろ苦い経験です。

後日、私は大量の始末書に追われると共に、各方面への御礼行脚に出たことは言うまでもありません。

 

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