もう随分と前のことです。

天真爛漫でいつも明るいメンバーKちゃんが、その日は様子がなんだかおかしい気がしました。会議中も心ここにあらずといった感じなのです。

こういう時の私の直感はまず外れません。会議終了後、Kちゃんを呼び、何か気になることでもあるのか、体調でも悪いのかと質問しました。

最初は何もないと言っていたのですが、抑えきれない気持ちがいきなり堰を切ったように溢れてきたのか、Kちゃんは大粒の涙を流しながら数日前に起こったプライベートの出来事を話してくれました。

「プライベートの感情を仕事に持ち込むな!」とは言えないほどに、Kちゃんが大きな精神的打撃を受けていたのが話を聞いてよくわかりました。泣きじゃくる彼女を抱きしめ、私が彼女のためにできることを考えた時、それは、彼女が精神的落ち着きと安らぎを取り戻すには暫く時間が必要であり、そのためには休職をして少し休んだらどうかと勧めてみることでした。

彼女は私からその提案があるとは思ってもみなかったようでしたが、実際、毎日会社に来て仕事ができる精神状態ではないことは本人が一番わかっており、私からの提案を喜んで受け入れてくれました。

「もしかしたらもう、戻ってこれなくなるかもしれない。社会復帰できなくなるかもしれない。」そんな不安を口にした彼女でしたが、「まずは心も体も休めること。仕事に戻る戻らないは、その後に改めてゆっくり考えようね。」と伝えました。

 

私の失敗は、Kちゃんへの休職を上司である社長に相談せずに私の一存で彼女に提案したことです。当時、人員不足で大変な時期でもあり、これ以上稼働要員が減ってしまうということは、大きな問題でした。

更に、私は「休職理由の原因となったプライベートの話は絶対に誰にも言わない」とKちゃんと固く約束をしました。そのため、どんなことでも包み隠さず話していた社長にも、これだけは言いませんでした。「彼女との約束なので理由は言えません。私を信じていただけないでしょうか。」

 

私はKちゃんを守ったつもりでしたが、上司である社長の信頼は裏切ってしまったのかもしれません。

相談もなしに勝手に休職の話を進め、その理由も明らかにしない私に、社長はどのように感じたのでしょうか。決して良い気持ちではなかったと思います。

その後、社長との関係は気まずくなり、どんどんと会話が少なくなり、距離が大きく開いていってしまいました。それはまるで、「坂道を転げ落ちるように」という表現がぴったりなくらいに、とても短い時間のことでした。結果的に他にもいろいろな事が積み重なり、私はその会社を去ることになりました。

 

メンバーを守るために上司に逆らうのは愚の骨頂。私は逆らったつもりはなかったのですが、結果的にはKちゃんの事のみならず、その後の行動においても、「メンバーを守る」「お客様にとってのベストを考える」を言い訳に、上司である社長を軽んじていたように思います。

マネージャーである以上、二律背反の事柄にいかに対応するかが問われるにもかかわらず、私はそこが全くできませんでした。全幅の信頼をもって全てを任せてくれていた上司に対して、疑念を抱かせる結果になってしまい、とても申し訳ないことをしてしまったと今は思っています。

 

もし今、同じことが起こったならば、うまく対応できるかどうかは分かりません。

しかし、ネガティブな状態に陥った時こそ、その相手ともっと密に話をする。たとえ相手がこちらを避けたとしてもこちらからは呼びかける。そして、お互いに開いてしまった心の溝がそれ以上大きくならないよう、精一杯の努力はしたいと思います。

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