あるサービス業の企業支援に入ったときのことです。
そこは、カリスマオーナー社長がゼロから立ち上げ、
苦労に苦労を重ねて、ついには上場まで果たした会社でした。
社長は、誰もが認める敏腕経営者。
でも、その人柄はとても温厚で、
穏やかな笑顔で社員に接する姿が印象的でした。
そんな社長からの依頼は、
「社員にもっと元気になってほしい。
私に頼るんじゃなく、社員自身で会社を引っ張っていけるようにしたい。
次の世代を育てたい。」
というものでした。
社長の話を聞いたあと、
私は経営会議をオブザーブさせてもらうことにしました。
参加メンバーは、社長、副社長、各部門の部門長、
そして会議ごとに担当マネージャーが入れ替わるスタイルです。
でも、その会議を目の当たりにして、私は違和感を覚えました。
担当マネージャーが発表を終えると、
副社長からの批評(というより、長時間の指摘)が延々と続きます。
発表したマネージャーも、他の部門長たちも、
うつむいたまま、ただただ耐えるだけでした。
会議が終わる頃には、
その場には重たい空気しか残っていませんでした。
これ……本当に「会議」って呼んでいいのかな?
そう思った私は、各部門長に個別にヒアリングすることにしました。
すると、全員が口を揃えて言いました。
「毎回あんな感じなんです。副社長からの批判を避けるために、
何日もかけて必死で準備するけど、
結局、ボコボコにされるだけ。
本当は、もう、しんどくて仕方がないんです。」
私は、そっと社長に尋ねてみました。
この現状をどう思っているのかと。
けれど、社長は穏やかに笑いながら、おっしゃるのです。
「副社長に任せているから。」
──あぁ、ここに根っこがあるんだな。
そう確信した私は、今度は副社長に話を聞きました。
副社長は、ぽつりと呟きました。
「社長が何も言わないから、俺が憎まれ役を買ってるんです。
次を育てなきゃって思うと、つい、厳しくなってしまう。」
二人とも、間違ってはいません。
ただ、やり方が、
未来を育てるどころか、
現場をどんどん消耗させてしまっていました。
そこで私は、社長と副社長に、
たったひとつだけ、でも、とても難しいお願いをしました。
「会議の場では、否定的な発言を封印してください。」
次世代を育てたいなら、
まずは”場”を育てなければいけません。
そう、心を込めて伝えました。
──続きは、また明日。
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