タクシーから降りてA社様本社ビル正面玄関に向かっている時、
三階窓から身体を半分乗り出し、満面の笑顔で
「尾藤さーーーん」と手を振ってくれたTさん。
1年前の彼からは想像できない変わりように、
思わず目頭が熱くなりました。
彼と初めて会ったのは2年前。
どうしようもなく荒れていて、周囲はみんな敵で、
孤独に苛まれていて壊れかけていました。
上司も、同僚も、誰にも心を開くことができず閉ざしてしまい、
言葉はネガティブワードのオンパレード。
その彼が、まるで無邪気な子供のように、
私を見つけて大声で手を振ってくれたのです。
「あれが、あいつの本当の姿なんだ・・・」
様子を見ていたTさんの先輩も驚きを隠せないようでした。
「尾藤さんのコーチングのおかげですね」
先輩はそう言いましたが、いえいえ、そうではないのです。
Tさんを変えたのは私ではないのです。
Tさんに多大な影響を与えたのは、Tさんの上司 Nさんでした。
Nさんも、Tさんに対して手を焼いて困り果てていました。
それでもひたすら行動し続けたこと。それは、
目を、言葉をかけ続ける。
Tさんの関心に関心を向け続ける。
Tさんへの期待を言い続ける。
つまり、Tさんを一人にしない。
自分はTさんを仲間だと思っていると、伝え続けることでした。
実際、Nさんのボヤキもありました。
ギブアップしそうな時もありました。
しかし、どんな時にも私の言葉に耳を傾け、
私を信用して行動し続けてくれたNさん。
その結果、Tさんの劇的な変化を見る事ができたのです。
素晴らしいのはメンバーを信じて関わり続けたNさん。
そして、Nさんの想いをしっかりと受け取って、
「本当の自分」を思い出し、余計な鎧を脱ぎ捨て、
純粋で陽気で頑張り屋な本来の姿を見せてくれたTさん。
本当に本当に、愛すべき二人の子弟コンビなのです。
人は、自分一人では堂にもならない時があるものです。
そんな時、自分を見ていてくれる人がいる、信じてくれる人がいる
そう思えるだけで前へ進むことができるのです。
もし、あなたの目の前の誰かが立ち止まっている、元気がない、大丈夫かな、
と感じることがあったなら、
どうぞ、その人に寄り添ってあげてください。
自分を見ていてくれる人がいる、信じてくれる人がいる
それだけで人は強くなれるものなのです。