「彼にはもう少し頑張ってほしいんですけど」
「若手が育ってきているのに、先輩としてもっとシャキッとしてほしい」
こんな言葉と共に社員育成のご依頼を頂くことがよくあります。
「〇〇さんには具体的にどんな期待をなさっているのですか?」
「具体的に」を強調して私が質問すると、
実際にとても分かりやすくお答えいただける場合と、
全くそうでない場合に分かれます。
残念なのは、具体的期待の言葉が聞こえない場合です。
こういうケースの多くは、社員さんの方でも
「自分は期待されていない」「どうせ自分なんて」
という思いを抱いている場合が圧倒的に多いです。
そういう気持ちを抱いているから言動が後ろ向きで期待されないのか
期待されていない虚無感から言動が後ろ向きになってしまうのか
どちらが先でどちらが後かはわかりません。
しかし絶対的に言えることは、
「自分は期待されていない」と感じるチームにいることほど辛いものはない
だろうということです。
期待は何も、成果業績に直接結びつくものでなくても良いのです。
彼はいるだけでチームが明るくなるムードメーカーだ。
彼女はいつも全体をよく見ているので、みんながなかなか気づかない
ちょっとした不具合や空気の変化を感じ、さりげなく対応してくれる。
リーダーは猪突猛進タイプなので置いて行かれがちな人もいるが、
彼が最後尾からいつもみていてくれるお陰で、
落ちこぼれなく全員がついて行く事ができる。
期待とは業績を上げる、結果を出すことばかりではありません。
期待をするには、その人の「良いところ」をしっかりと見つめ、
それらを活かしてもらうこと、最大限良いところを発揮してもらうこと、
それらも立派に期待なのです。
ある企業様でのコーチングでのこと。
どうにも前向きになれないAさんに対して、
ついに私の悲しい怒りが爆発してしまいました。
「私はAさんの良いところがもっと活かされて、
今以上に輝いてほしいと心から願っている。
そのための手伝いを私はしたいと真剣に思っています。」
半分怒りながらまくしたてる私に、
Aさんはオンライン上でもそれとハッキリわかるくらいに目を潤ませ
「もう長い事、期待されるなんてなかったので・・・」
と仰いました。
過度の期待はプレッシャーとなり、却って、相手を委縮させてしまうかもしれません。
しかし、「期待してるよ」と口先ばかりでその中身が全くないとしたら
そんな悲しいことはないですし、そういう気持ちがない期待の言葉は
「君に期待はしていない」と相手に伝えているのと同じだということです。
メンバーの、チームの、相手の成長を願うなら、
適切な期待が大切です。
もし、あなたがじれったく思うメンバーがいたとしたら、
それはあなたの期待が足りない、または間違っているのかもしれません。