ロールプレイで部下役をやっていた時のことです。
「あなたは頑張ってきたのですね。」
「あなたのお陰でみんな助かっています。」
ポジティブなことを上司役の方から言ってもらっているのですが、いまひとつ嬉しくないというか、響きませんでした。
遠い遠い昔、私がまだ20代の頃の私の先輩は、私のことを「君」とか「あなた」と呼ぶ人でした。
ごくごく稀に名字を言ってくれることもありましたが、基本的には「君」か「あなた」。
私は、その先輩のことが好きだったのですが、いつも、とても寂しく感じていました。
「君」「あなた」と言われると、その寂しさが大きくなりました。
甘えるな~ と言われるかもしれませんが、心の距離・壁 をその都度感じたからです。
それがどうしても嫌で、ある時、勇気を出して先輩に言いました。
「あのぉ、すみません。『君』『あなた』ではなく、名前で呼んでください。なんか、冷たく感じてしまって・・・」
まだフレッシュだった私は、それだけ伝えると泣いてしまったのをよく覚えています。
先輩はとても驚いた様子でした。
「ごめんごめん。今まで全く気がつかなくて。君のことは、いや、尾藤さんのことは大切な後輩だと思っているよ。距離を感じさせてしまっていたのなら本当にごめんね。これからは気をつけるよ。まったく悪意はないからね。もし、また間違えて「君」「あなた」って言っちゃったら、遠慮しないで注意してね。」
遠い昔を思い出し、ロールプレイの上司役の方にも言ってみました。
「課長、あのぉ、すみません。「あなた」じゃなくて、名前で呼んでもらっていいですか。「あなた」と呼ばれると、冷たく感じてしまって寂しいので。」
すると、上司役の方も、過去における私の先輩のようにびっくりしていました。
「えっ? そんなこと言われたの初めて! 別にあなた、いえ、尾藤さんにだけ特別じゃなくて、だれでも「あなた」って呼んでる・・・・。 あ・・・ 名前で呼んでるヤツもいる・・・・」
そしてそのあと、上司役の方がこんなことをポツリとつぶやきました。
「教えてくれてありがとう。名前で呼ばない人は、僕自身の心の距離だったのかもしれない。無意識だったけど。」
マネージャーの皆さん。
名前で呼ぶ。 単純なことだけど、とても大切なことではないでしょうか。
もちろん、課長、部長、社長、と役職で呼ぶのではなく、〇〇課長、〇〇部長など、社内でも、もちろんお客様であっても、名前があるのとないのとでは、相手が受ける印象は大きく違うはず・
あ!これは何も、仕事に限ったことではないですよね。
夫婦がパパ、ママと呼び合うのではなく、ちゃんとお互いを名前で呼ぶとか。
ちゃんと名前で呼ぶ。
それが関係を築く第一歩なのではないでしょうか。