「自分は他者からどう見えているか?」という投稿をLinkedInで行ったところ、多くのリーダーの方々から熱のこもった反響をDMでいただきました。
その中で改めて浮き彫りになったのは、リーダーが抱える「認識のズレ」の根深さです。
戦略人事コンサルタントとして多くのリーダーの変容を支援してきましたが、組織の停滞を招く最大の要因は、実はリーダーの能力不足ではありません。
自らの「意図」と、周囲への「影響」の間にある、目に見えない深い溝、すなわち「認識のズレ」にあります。
1. 「メタ認知」が高いリーダーほどハマる罠
「メタ認知」という言葉があります。
自分の思考や感情、行動を客観的に俯瞰して見る力のことです。
結果を出してきたリーダーの多くは、このメタ認知能力が非常に高く、自身の言動を常にセルフモニターしています。
しかし、ここに大きな落とし穴があります。
「自分は今、あえて厳しく接することで部下の奮起を促している」
「自分は今、感情を抑えて論理的に判断を下している」
このように、自分の内面(意図)を正しく把握できていればいるほど、「自分は正しく振る舞えている」という確信が強まります。
しかし、それはあくまで「内的自己認識」の正解であって、他者の目に映る姿と一致しているとは限りません。
リーダーが「冷静に振る舞っている」とメタ認知していても、周囲からは「本音が見えず冷徹で、近寄りがたい」と見られているかもしれません。
この時、リーダーのメタ認知は「正しい」のですが、周囲へのインパクトとの間には決定的な「ズレ」が生じているのです。
2. なぜ「ズレ」を直視できないのか
この乖離を指摘されたとき、多くのリーダーは無意識に防衛本能が働きます。
「自分の意図は正当である」「相手の受け取り方が間違っている」と。
特に日本組織においては、「意見と人格の未分化」という特有の課題がこの問題を複雑にします。
会議での論理的な反論が、受け手側には「自分という人格への攻撃」と変換されてしまうことが少なくありません。
また、心理的安全性が低い職場では、周囲からのフィードバックに「好き嫌い」や「忖度」といった感情的なノイズが混ざりやすくなります。
その結果、リーダーは「周囲の声は感情論であり、正しくない」と切り捨て、ますます自分の「内的正解(意図)」に閉じこもってしまいがちです。
これが、視野狭窄に陥り、他者の声が届かなくなる構造的メカニズムです。
3. 「Intent(意図)」と「Impact(影響)」を分離する
では、このズレをどう解消すればよいのでしょうか。
私が支援の現場で大切にしているのは、手法(How To)の前に、事象を論理的に切り分ける「認識の枠組み」を変えることです。
具体的には、以下の2つを完全に分離して扱う場を作ります。
- Intent(自分の意図):自分は何を目的として、その言動をとったのか。
- Impact(周囲への影響):その結果、周囲で何が起きたか(相手はどう反応したか)。
重要なのは、周囲の反応が「正しいか、間違っているか」を判定することではありません。
また、相手の反応を「自分の人格への評価」と捉えて一喜一憂することでもありません。
周囲の反応は、あくまで自分の言動によって引き起こされた「一つの客観的なデータ(現象)」に過ぎません。
実験結果を眺める科学者のような視点で、「自分の意図(A)」を投入した結果、「周囲の反応(B)」というデータが戻ってきた。
ただ、その事実を否定せずに「横に置いてみる」のです。
4. 変化の起点は「スキルの習得」ではない
「どう言えば部下が動くか」「どうすれば好かれるか」といったコミュニケーションのスキルを学ぶ前に、まずこの「自分の内側の正解」と「外側の事実」の乖離を、ありのままに受け止めること。
私がこれまで、多くのリーダーが劇的に変わる瞬間を見てきたのは、まさにこの「認識のアップデート」が起きた時でした。
「自分はこう振る舞っているつもりだったが、事実はこう伝わっていたのだ」と、鏡に映った自分の姿を直視した瞬間、リーダーの器は一回り大きくなります。
リーダーとしての「ありたい姿」への最短距離は、新しいスキルを積み上げることではなく、今そこにある「ズレ」を受け止めることから始まります。
皆さんの「鏡」には今、どんな姿が映っているでしょうか。
その姿を否定せず、まずはフラットに眺めてみることから、真の変容は始まります。
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