人間力

リーダーに求められる「レジリエント力」の本質

経営層や上級管理職という立場にあっても、誰もが落ち込みます。
決断の重さ、組織への責任、そして、本音を語ることが許されない孤独。
判断に迷い、自信を失いそうになる瞬間は、むしろ責任が重い立場であるほど増えていくものです。

それでも多くのリーダーは、「弱さを見せてはいけない」「立ち止まってはいけない」と自分を叱咤し続けます。

しかし、本当に問われているのは、落ち込まないことではありません。
大切なのは、そうした状態からどれだけ早く、そして確実に立ち直れるか。
すなわち、リーダーとしての「レジリエント力」です。

・重要なプロジェクトが頓挫し、取締役会で説明責任を問われた時
・長年の右腕だった幹部が突然退職を告げた時
・市場環境の激変により、自分の戦略が時代遅れになったと感じた時
・部下から「あなたの判断は間違っている」と面と向かって言われた時

こうした瞬間、リーダーの内面では何が起きているのでしょうか。
多くの場合、出来事そのものよりも、「自分への意味づけ」が回復を遅らせていると考えます。

その際、「前向きに考えよう」「気持ちを切り替えよう」といった方法論が役立つこともあります。
しかし、経験を重ねたリーダーほど、それだけでは回復できない場面に直面します。
ポジティブ思考は「考え方」を変えようとしますが、感情はそう簡単にコントロールできません。
なぜなら、問題は思考の表層ではなく、もっと奥深いところで起きているからです。

私が重要だと感じているのは、「今、自分は落ちている」と正確に認識する力です。
そして、いち早く立ち直るために、自分を一段引いたところから捉える視点を持つこと。
この力を、メタ認知と呼びます。

座禅を組んでいて、雑念を追い払うことができない私に、和尚様が次のようなお話をしてくださいました。

「私たちだって、無になっているわけではない。
『お腹がすいたな』『今、蚊が飛んできたな』『外で子供たちが遊んでいるな』など、座禅中もいろいろな考えが頭に浮かんでくる。
大切な事は、考えないよう努力することではなく、『あ、今、自分はお腹がすいたと思ったな』と捉えること。
そしたら、それをすぐ脇に置くこと。
『考えた』と客観的に捉えることが、何より大切なんだ。」

座禅にもレジリエント力にも通じるのが、「自分を客観的に捉える力=メタ認知」なのです。

「この失敗は、自分のリーダーとしての価値を否定するものだ」
「迷うこと自体が、弱さの証明だ」
「ここで立ち止まれば、組織全体が動揺する」
こうした無意識の前提が、感情を固着させます。
メタ認知が働くと、この「意味づけ」と「事実」を切り分けることができます。

今、自分の中で何が起きているのか。
何に反応し、どんな解釈をしているのか。
そして、立ち直りを妨げている思い込みは何なのか。

出来事そのものが人を打ちのめすのではありません。
多くの場合、出来事に対する意味づけや無意識の前提が、回復を遅らせています。
メタ認知が働くと、感情と自分を切り離し、「いまはこういう状態なのだ」と整理することができます。
無理に前向きになろうとしなくても、自然と次の一手に戻る準備が整っていくのです。

リーダーの精神状態は、想像以上に組織へ影響します。
リーダーが立ち直れずにいると、会議の空気が重くなり、部下は忖度を始め、 挑戦的な提案が出なくなります。
逆に、揺れながらも「今はこういう状態だが、次に進む」と整理できるリーダーの下では、 失敗を恐れず、修正を前提とした挑戦が組織全体に根づいていきます。

強いリーダーとは、決して折れない人ではありません。
折れた自分を否定せず、状況と自分を冷静に捉え直し、必ず戻ってこられる人です。

レジリエント力とは、気合や根性ではなく、リーダーとしての「あり方」の成熟そのもの。
感情に飲み込まれず、自分に何が起きているのかを捉え直し、次の一手を、冷静に選び直せる力なのです。

あなたは今、自分の内面で起きていることを、どれだけ正確に認識できているでしょうか。
この問いに向き合うことが、レジリエント力を育む第一歩になります。

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