週明けの都市銀行CDコーナー。
私が並んだ12号機は預金引き出しの際にその一部金額を新券で引き出せるため、窓口での両替よりもスピーディなこともあって多くの順番待ちの列ができていました。
ようやく次が私の番になった時、私の前の男性が機械の前で何やらとてもイライラしているのがこちらからも伺い知れました。
諭吉さん数枚を左手にピラピラさせながら、画面に向かってブツブツ言っているのですが、やおら振り向いたかと思うと、入り口ドア近くに立っている年配のフロア係の男性を呼びつけました。
「ちょっと、あんただよ!」
うわぁ!感じ悪っ!
内心そう思いましたが、黙っていました。
「あんたさっき、ここで新札両替できるって言ったよな。」
「いえ、ここはお引出しの際に新券を選択できるだけです。隣の機械で一度ご入金頂き、その後、改めてこちらの機械でお引出しくださいませ。」
「あんたさっき、言っただろう!!!」
男性とフロア係の男性が揉め始めました。
私の後ろに並んでいる、ヤンキー座りをしたどう見ても60歳は超えているだろうと思われる女性が言いました。
「うだうだ言ってないでさぁ~、他でやってよ。並んでんだよ、こっちは!」
7号機を操作していた同じく60~70代と思しきストリートファッションの女性が言いました。
「全く朝からうるさいね。どうだっていいじゃないか、こっちでやったら済む話だろう!」
12号機前の男性の怒りはおさまるどころかまさに火に油。
「お前らうるさいんだよ!関係ない奴らは黙ってろ!」
そこに飛んできたのはフロアマネージャーの女性でした。
「お客様、お話はこちらでお伺いいたしますので。」
すると男性はますます大きな声で怒り始めました。
「お前はこいつよりも偉いのか?いったいどういう教育してんだよ、この銀行は!!!」
爽やかな朝が一気に重苦しく刺々しい雰囲気に変わりました。
順番は次なのに、いつまで続くんだ、この揉め事は・・・
そう思いながらも、私は男性と二人のヤンキー風おばちゃま、それに銀行員さんとのやり取りを興味をもって見ていました。
驚くべきは、銀行員さんは最初の男性、次に出てきたフロアマネージャー共に、怒り荒れ狂う男性に「申し訳ありません」とは一度も言わず、ただ「あちらでお話を伺います」とひたすら場所の移動を促していたことでした。
まるでそれは臭いものに蓋でもするかのようでした。
一向にらちが明かず、3人目に登場した女性は支店窓口のマネージャーのようでした。
「お客様、ここは銀行ですので色々なお客様が手続きにいらっしゃいます。ここではゆっくりとお話を伺うことができませんので、どうぞあちらのお席で・・・」
やはりマネージャーも一言たりとも謝罪することはなく、場所の移動を促しました。
「知らねぇよ、そんなこと!そんなのはお前らの都合だろうが!!!」
怒りの鉾を収める先が全く見当たらずますますエスカレートしてきたその男性。
なんだかなぁ。他に言い方あるのになぁ。主語を私(銀行)にしたら、そりゃぁ「お前らの都合」だよね。主語を相手にしないとマズイでしょう。
と心の中であれこれ思った私ですが、次の瞬間、男性と目がバッチリ合ってしまいました。
うわぁ・・・・
すると男性は急に穏やかになり、私に向かってこう言ったのです。
「あんた、さっきからずっと黙って並んで待ってんだよな。待たせて悪かったな。」
そう言ってからマネージャーに「部屋はどこだよ?」と相変わらず悪態をつきながら移動して行ったのです。
男性が私を見て怒りの炎が鎮まったのは偶然だと思うのですが・・・・
またこの男性のクレームっぷりもどうかと思うのですが・・・
しかしそれよりも何よりも私が「マズいよね」と、とてもとても感じたのは、銀行員3人の方達のそれぞれの対応でした。
最初のフロア係の男性は、お客様のクレームの内容をしっかりと最後まで聞こうとせずに、「それだったらこうですよ」と、さばこうとしました。
お客様が怒ったのを見ても、「私はちゃんと説明しました。当行に両替機はございませんと、ここにも書いてあります。」とまるで開き直ったかのような物言いで、第三者の私が聞いていても、「その言い方はないんじゃないの?」と感じたほどです。
次のフロアマネージャーは臭いものに蓋作戦の一点張り。
やはり男性の言い分に耳を傾けようとする姿勢は皆無でした。
三番目のマネージャーはまさに男性の言うように、銀行にとっての言い分を述べるだけで、男性の話に耳を傾ける様子はありませんでした。
この銀行にはそうするようにマニュアルに書いてあるのかしら?
そう感じるくらいに三人の対応はある意味、一貫していました。
「言葉足らずでお客様に誤解を生じさせるご案内をしてしまったようで大変申し訳ございませんでした。」
こんな風に、最初にフロア係の男性が丁寧に言っていたら、男性もあそこまで腹を立てることことはなかったのではと思います。
確かに12号機前の男性の風貌はヤ〇ザさんに近いものがありました。
けれども、それとこれとは話が別だと思うのです。
大きな声で怒鳴られたら他のお客様にご迷惑だし雰囲気も悪くなると思うのであればなおさら、臭いものに蓋をするのではなく、まずはその人の言い分をしっかりと聴くことが大切なのではないでしょうか。
言いがかりではなく怒る理由があって怒っているのですから、相手の風貌や物言いで判断するのではなく、こちらに落ち度はなかったのかと真摯に耳を傾ける姿勢が必要でしょう。
相手の怒りを助長してしまうのも、怒りを鎮めるのも、それはこちら側の対応如何だと思います。
まずは言い分をしっかりと聴く。
事実だけではなく、そこに隠されているその人の気持ち・感情もしっかりと受け止める。
その上で、必要であれば謝罪をし、適切な説明をする。
仮に相手の勘違いであったとしても、勘違いをした相手を責めたりこちらの正当性を示すのではなく、勘違いを招いてしまったのはこちら側の説明不足と受け止め、わかりやすい説明を心がける。
そうして初めて、こちらの気持ちが誠意として相手にも伝わるのではないかと思います。
ちなみに・・・・
私もかつて、同じそのフロア係の男性の説明で12号機で混乱してしまい、「両替できないよ~」と言った一人です。
今回の説明がどうだったかは不明ですが、「新札に変える=手持ち金の両替」とこちら側は思い込んでいるため、「口座からの出金(引出し)手続きの際に、その一部を新券を選択して引き出すことができる」と丁寧に説明することが必要なのかもしれません。
クレーム対応を見直すことももちろんですが、相手にとって分かりやすい説明とは何か。
銀行さんもお客様目線で考えてくれるとありがたいですね。