「複数の研修が同時並行していて、どれが成長に寄与しているか分からない」というご相談をいただくことがあります。
研修の効果測定は、人事にとって悩ましいテーマの一つです。
この問いに向き合う際、まず確認したいのは「何を目的として測定するのか」という点です。
人の成長を促すことが目的なのか、それとも研修の中身を改善することが目的なのか。
目的によって、測定すべき指標も、評価の視点も変わってきます。
人の成長は、研修だけで起こるものではありません。
講演、読書、対話、現場での経験など、学びの手段は多岐にわたります。
その中で、どれか一つだけが決定的な要因となることは稀であり、ほとんどの場合は複数の要素が複雑に絡み合っています。
研修と成長の「相関関係」を導くことはできても、「因果関係」を明確にすることは困難です。
成長は「点」ではなく、「線」や「面」で捉えるべきものです。
また、研修はあくまで「きっかけ」や「刺激」に過ぎません。
成長には、アウトプットの環境――上司の関与、仲間との対話、挑戦できる風土など――が不可欠です。
インプットの質とアウトプットの環境が整ってこそ、学びは定着し、行動変容が起こります。
研修後に実践する機会がなければ、学びは一過性のものになってしまいます。
では、研修の効果をどう測るべきか。
研修単体のROIではなく、人事施策全体が「人の成長にどれだけ貢献しているか」を測る視点が重要です。
そのためには、プロセスKPI(頻度・質・タイミング)を用いて行動変容を可視化し、事前・事後・追跡の三段階で行動変化を捉える必要があります。
ここで重要になるのが、人事と現場の役割分担です。
人事の役割
- 研修単体のROIではなく、人事施策全体の「成長への貢献度」を測る
- マネージャーが支援しやすくなるよう、必要なデータ・ツール・仕組みを提供する
研修をやるだけが人事の仕事ではありません。現場が育成に取り組みやすくなるよう、支援設計を担いましょう。
※研修設計に関する詳細は、昨日のブログ記事をご覧ください
→ 行動変容を促す研修設計|ペインとインサイトを見極める方法
現場(マネージャー)の役割
- 部下のアウトプットを見守り、応援する
- 観察・フィードバックを通じて、言行ギャップを補正する
- 「事実/解釈/提案」の構造でフィードバックを行う
- 成功・失敗体験を共有し、再現性のある行動を促す
研修設計を人事にまかせっきりにするのではなく、「こんな内容をしてほしい」「ここが現場では鍛えたい」といったギャップを人事に届けることも、現場の重要な役割です。
育成は、人事と現場の協働によって実現します。
人事がインプットを設計し、現場がアウトプットを支える。
どちらか一方では不十分であり、両者の連携こそが、持続的な成長を生み出す鍵なのです。
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