事業戦略や部門戦略に、「やらされ感」が付きまとうことが多いのはなぜでしょうか。
それを策定したはずの部門責任者でさえ、強い義務感と責任感に押され、戦略に輝きや希望を感じられないことも少なくありません。
その原因は、戦略の立て方にあります。
多くの企業では、経営戦略に基づいて事業戦略を立てる際、「何をすべきか」「どう達成するか」というMust・Shouldベースで思考が始まります。
しかし、人の力を引き出すのは、“べき”ではなく“たい”の力です。
経営戦略はAスタンス──事業戦略もAで描ける
戦略策定には2つのスタンスがあります。
- Aスタンス:ありたい姿(Will・Want)を起点に戦略を練る
→ 経営戦略ではこのスタンスが基本。
企業のビジョンやパーパスから逆算して戦略を構築します。 - Bスタンス:べき(Must・Should)から戦略を定め、意味を後付けする
→ 実行部隊が担う事業戦略・部門戦略ではこのスタンスが多く見られます。
しかし、事業戦略であっても、Aスタンスで描くことは可能であり、むしろ必要です。
経営戦略の枠組みを受け入れた上で、「自部門はどうありたいか」「何を実現したいか」という意志から戦略を描くことで、戦略は“やらされごと”ではなく“ジブンゴト”になります。
事業責任者の意志が、戦略に魂を入れる
あるBtoB企業の事業部長は、経営戦略で「新規市場への展開」が示された際、「新規顧客獲得数」や「売上目標」だけを並べるのではなく、次のような問いから戦略を描きました。
「この事業を通じて、どんな社会的価値を生み出したいのか?
私たちの製品が、どんな未来を支える存在になりたいのか?」
この問いから生まれた戦略は、単なる数値目標ではなく、「社会課題に貢献する技術開発」「顧客との共創」「社員の誇りを育てるブランド構築」など、部門の意志が込められた“魂のある戦略”となりました。
結果として、社員の主体性が高まり、戦略の実行力も格段に上がりました。
意志を伝え、個人の意味づけにつなげる
部門の戦略がAスタンスで描かれていても、それが現場に伝わらなければ、意味づけは生まれません。
- 部門の「ありたい姿」を言語化し、メンバーに伝える
- その意志に共感し、自分のWill・Want・Wishと重ねる機会をつくる
- 上司が「あなたはどうしたい?」と問いかける風土を育てる
このようなプロセスを通じて、戦略は組織全体に浸透し、推進力を持ちます。
組織風土が、魂を受け止める器になる
意味づけ力は、個人のキャリアだけでなく、部門や組織のありたい姿を語る風土によって育まれます。
- 「うちの部門はこうありたい」
- 「会社として、こんな方向に進めたら面白い」
- 「こうだったらいいよね」
こうした対話が日常的に交わされる組織では、戦略に対する意味づけが自然と生まれ、推進力が高まります。
戦略に魂を入れる──それが人を動かす
戦略は、上から降ってくるものではなく、「自分たちがどうありたいか」から始めるものです。
経営戦略に基づく事業戦略であっても、Aスタンスで描き、意志を伝え、個人の意志とつなげる。
このプロセスこそが、戦略に魂を入れ、組織の力を最大限に引き出す鍵です。
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