マネジメント・リーダーシップ

部下の感情に飲み込まれないマネジメント| 「受け止める」姿勢が信頼を生む理由

「話を聴いている時、感情移入してしまって、自分が辛くなってくる」

1on1やコーチングの場で、管理職の方からよく伺う言葉です。
部下に真摯に向き合おうとする方ほど、こうした悩みを抱えています。

一緒に喜ぶ。一緒に悲しむ。

喜怒哀楽を共にすることは、相手との心理的距離を縮め、信頼関係を築くうえで確かに有効です。
一方で、それが行き過ぎると、管理職自身が消耗し、冷静さや客観性を失ってしまう場面も少なくありません。

この一因として、「共感力」がマネジメントにおいて重要だと言われるようになったことも、影響しているように感じます。
「部下と同じ気持ちにならなければならない」
「感情を共有できなければ、良い上司ではない」
と、無意識に自分にプレッシャーをかけている管理職の方もいらっしゃるようです。

しかし、感情移入が強くなりすぎることで、
・判断がぶれる
・公平性を欠く
・マネージャー自身が疲弊する
といった弊害が起きています。

経営や組織運営の視点で見れば、これは決して小さな問題ではありません。
実際、感情移入による判断のブレは、人事評価の公平性低下、離職率の偏り、管理職の長期休職といった、測定可能なリスクとして表れることがあります。

「受け入れる」ではなく「受け止める」

こうした相談に対して、私がお伝えしているのは、「受け入れる」のではなく「受け止める」という考え方です。

例えば部下が「悲しい」と話してきた時、「悲しかったんだね」「そう感じたんだね」と、事実としてその感情を受け止めます。
しかし、自分の感情まで相手と同じところには持っていきません。
自分の感情はあくまでも、自分のあるべき場所から動かすことをしません。

これは、「冷たさ」ではなく、むしろ、管理職として非常に誠実な姿勢だと私は考えています。

冷たいとは、相手が「悲しい」と言っているのに、「そんなことで?」「気にしすぎでは?」と、その感情を否定し、跳ね返してしまうことです。

一方で、「あなたは悲しかったのですね」と受け止めることは、そう感じている相手の存在そのものを承認する行為です。
多くの場合、部下は「一緒に悲しんでほしい」のではなく、「理解してほしい」と思っています。
自分の感情を素直に吐露することができる。
それを否定せずに受け止め、次を見つめる示唆を与えてくれる上司。
そうした上司だからこそ、気持ちを打ち明けることもあるし、頑張る活力をもらえる信頼すべき存在として部下は、上司を認めるのです。

「受け止めているつもり」が、スルーとして伝わる理由

ここで一つ、よくあるすれ違いがあります。

上司本人は「ちゃんと受け止めている」「否定もしていない」と思っているにも関わらず、部下側は
「流された」「形式的に扱われた」と感じてしまうケースです。
この違いは、言葉の選び方以前の、上司の「あり方」が大きく影響しています。

例えば、「あなたは悲しかったのですね」という言葉自体は、受け止めの型としては正しいものです。
しかし、その言葉に「甘えた事言っている」「面倒だな」など、上司側に言葉と裏腹の本音があったとしたら、その想いは必ず言葉に乗ってしまいます。
いわゆる「言霊」というものです。

人は、自分が尊重されているかどうかを、言葉以上に相手のあり方から感じ取っています。
だから、同じフレーズを使っていても、ある人からは「分かってもらえた」と感じ、別の人からは「スルーされた」と感じるのです。

受け止めるとは、「相手の感情を安易に処理しない」という姿勢そのものです。

時間がなくても、答えを出せなくても、「あなたがそう感じていたことを、私は大切なものとして扱っています。」という相手へのメッセージ。
それが、態度と言葉の両方に載っているかが何より大切なのです。


自分を守ることは、組織を守ること

また、感情を受け止める姿勢は、相手のためであると同時に、自分自身を守るためでもあります。
管理職が感情的に消耗し続ければ、組織全体の意思決定や健全性にも影響が及びます。

だからこそ、「一緒に感じる」ことだけが支援ではない、
という視点を持つことが重要だと感じています。

受け止めることは、距離を置くことではありません。
相手を尊重しながら、役割として向き合うための、成熟した関わり方です。

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