「成長にはトライ&エラーが必要だ。」とよく言われる。
しかし、「エラーが怖い」「前に進めない」という人は多い。
これはある意味、「完璧主義」がもたらす弊害かもしれない。
本人がそうなのか、上司がそれを求めているのか。あるいは両方か。
いずれにしても、ベースにある考え方が完璧主義だとトライ&エラーは難しい。
一方、躊躇なくトライ&エラーができる人もいる。
「え? その状態でGOするの?}と周囲が思ってしまう状態でも、本人や上司は、そこに躊躇がない(または少ない。)
これは、「完了主義」の考え方によるものだ。
完了主義は、完全を求めるのではなく、完了することに主軸を置く。
完璧を求めて行動が遅れる、行動できないよりも、60点でもまず行動を完了させる。
その後、修正点を確認し、更に、行動を続けるという考え方だ。
完璧主義で結果が出せた20代前半
私自身、20代前半の頃は完璧主義だった。
当時はまだ「正解」とされるものが明確にあり、上司や先輩がその答えを知っている時代だった。
ITの進化も「これから」という頃で、ビジネスのスピードも今ほど速くない。
社内でも完璧なアウトプットを出すことが評価され、それが「良し」とされていた。
「PDCAを回せ、トライ&エラーを繰り返せ」と言われていたが、失敗(エラー)しないことを前提のアウトップとだったので、本質的なPDCAは全く回っていなかったと思う。
優秀な上司のおかげで、正解への考え方は早くに身に着けることができた。
一方、失敗への耐性は非常に弱く、正解が見えない事柄へのチャレンジは、清水の舞台から飛び降りるほどの勇気が必要だった。
急成長する型破りな完了主義の部下
1990年代後半、「中途半端なままにアウトプットする」部下が、私の考え方に大きな影響を与えた。
どう見ても50点か60点とう中途半端な状態でも、彼は平気でアウトプットをしていた。
当然、お客さまや社内からは何らかのフィードバックをいただく。
すると彼は、それを受けて素早く修正し、またすぐにアウトプットする、といううことを繰り返していた。
すなわち、60点のアウトプット→修正して75点のアウトプット→修正して90点のアウトプット→修正して100点のアウトプット、といった具合である。
この彼の中途半端なアウトプットの繰り返しは、完璧主義だった彼の同期よりも、高い成果と早い成長を彼にもたらした。
周囲からは「いい加減な奴の方が結果を出している」「失敗を恐れない変わった奴だ」といぶかしがられていた。
しかし、彼は「いい加減」なのではなく、「良い加減」――つまり「ちょうどいい塩梅」で物事を進めていたのだ。彼はトライ&エラー(試行錯誤)をしていたのではなく、Go & Go(前進)を行っていたのだ。
完璧主義の落とし穴:遅延と変化への脆弱性
完璧主義とは、その名の通り100点満点のアウトプットを目指すスタンスだ。
質へのこだわりはもちろん重要だが、これにはいくつかの課題がある。
- アウトプットの遅延:
完璧を追求するあまり、準備や検討に時間をかけすぎ、なかなか実行に移せないことがある。
結果として、プロジェクトの開始や目標達成が遅れがちになる。 - PDCAサイクルの停滞:
「完璧」を目指すあまり、最初のステップでつまずくと、次の行動に移るまでに時間がかかり、PDCAがスムーズに回らなくなる。 - 変化への対応力不足:
考えている間に、市場や顧客のニーズ、あるいは技術といった「正解」そのものが変わってしまう可能性がある。
完璧な答えを追い求めている間に、その答えが時代遅れになってしまう、という皮肉な事態も起こりえる。
完了主義の強み:スピードと適応力
完了主義は、中身が50-60点であっても行動を「完了させる」ことに主軸を置くアプローチだ。
- PDCAサイクルの加速:
未完成でも良いので、まず形にして世に出すことで、すぐにフィードバックを得ることができる。
そのフィードバックを基に修正を加え、再度アウトプットする。
この繰り返しにより、PDCAサイクルが高速で回転し、学習と改善のスピードが飛躍的に上がる。 - 「失敗」の概念の転換:
完了主義において、「失敗」という概念は存在しない。
あるのは「これは違うから修正する」という検証のプロセスだけである。
うまくいかなかったことは、成功への道のりにおける貴重なデータであり、次に進むための学びとなる。 - 変化への柔軟な対応:
まずは実行し、その結果から学ぶことで、変化の兆候を素早く捉え、軌道修正できる。
正解が見えない、正解が変わる、不確実性の高い現代において、この適応力こそが成功の鍵となる。
エジソンの言葉に学ぶ「検証」の重要性
かの発明王トーマス・エジソンは、電球の発明に関して「私は1万回失敗したのではない。うまくいかない1万通りの方法を発見したのだ」と述べたと言われている。
これはまさに完了主義の思想を体現している。
彼にとって、うまくいかない試行は「失敗」ではなく、成功への仮定に至る「検証」だった。
何かを諦めてやめてしまった時に初めて、それは「失敗」となる。
しかし、完了主義の視点に立てば、検証を繰り返し、改善し続ける限り、それは「失敗」ではなく、成功へと向かう「途中」なのだ。
不確実な時代を生き抜くために
2025年の今、時代は常に変化と不確実性に直面している。
完璧主義は、時に私たちの行動を鈍らせ、成長の機会を奪ってしまう。
まずは行動し、そこから学ぶ完了主義こそが、不確実な時代を生き抜き、個人も組織も継続的に成長していくことができるスタンスだ。
あなたとあなたの組織は、完璧主義に陥っていないだろうか?
完了主義で高速PDCAを回し、変化に対応できているだろうか?
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