先日、LinkedInにある過去の失敗談を投稿したところ、多くの経営者やリーダーの方々から反響をいただきました。それは、かつて私がコーチングを提供していない方から「あなたがコーチングのコーチだなんて、絶対にありえない!」と突き放された経験です。(LinkedIn記事はこちらから )
当時はその言葉に憤慨した私ですが、今なら、そう発言した方の気持ちが痛いほどよくわかります。
あの頃の私には、コーチとして、あるいは一人のリーダーとしての「あり方」が欠けていました。
1.現代のリーダー育成が陥る「スキルの罠」
巷には、リーダーシップやマネジメントに関する「スキル」が山のように溢れています。
GROWモデル、フィードバック、1on1の型など、確かに有用なものばかりです。
しかし、多くの組織では、「研修で学んだのに現場が変わらない」という現象が起きています。
なぜでしょうか。
私は、多くのリーダー育成が「スキルの罠」に陥っているからだと考えています。
スキルは「道具」です。
しかし、道具そのものよりも、その道具を扱う「使い手(リーダー自身)」の土台が整っていなければ、どんなに高価で鋭い道具も機能しません。
世の中の研修ビジネスの多くがスキル習得を強調するのは、その方が教えやすく、受講者も「何かを得た」という実感を得やすいからかもしれません。
しかし、リーダー育成で最初に問われるのは、「どんな姿勢で人と向き合うのか」という『あり方』です。
スキルを伝えるのであれば、それを扱う前提となる「あり方」まで育てることが欠かせません。
土台がないままスキルだけを積み上げるのは、片手落ちだと感じています。
2.「客観視」という名の過酷なトレーニング
LinkedInでのやり取りの中で、「どうすれば客観的になれるのか」という問いをいただきました。
自分を客観視し、自身の傲慢さや執着を手放すことは、リーダーにとって最も難しく、かつ避けて通れない課題です。
客観性とは単なる「手法」で身につくものではなく、「環境」によって鍛えられるものだと考えています。
私の場合、自らにプロのパーソナルコーチをつけ、自分では思いつくことがない角度からの「問い」に晒され続ける環境を意識的に自分に課してきました。
また、アクションラーニングの現場で、自身のこだわりを手放して場を俯瞰する訓練を積み重ねました。
自分一人で自分を見るのにはどうしても限界があります。
しかし、多様な他者からの多方面にわたる「問い」に晒され、自分を直視し続けることは、いかに自分が偏った角度だけでモノを見たり考えたりしているかの気づきを与えてくれます。
この「気づき」を言葉にして他者に伝えることで、客観性や俯瞰性が徐々に養われていきます。
非常に泥臭いプロセスですが、私にとって、「あり方」を磨く本質的かつ効果的なトレーニングでした。
3.「あり方」が相手を変えるメカニズム
「相手の態勢が整っていなければ、コーチング(指導)は機能しないのではないか」というご意見もいただきました。
確かに、受ける側の準備状態は重要です。
しかし、リーダーとして問われるのは、「相手の準備が整うのを待つ」ことではありません。
コーチ側、あるいはリーダー側の「あり方」を貫くことで、相手の中に変化を呼び起こすことです。
クライアント(部下)がどのような状態であっても、「その人の可能性をその人以上に信じ切る」という覚悟。
コントロールしたいという欲求を手放し、一貫した誠実さで関わり続けること。
リーダーが揺るぎない「あり方」で立ち続けたとき、最初は心を閉ざしていた相手の中に、徐々に変化の兆しが生まれ、自ら準備を整え始める瞬間を、私は何度も目にしてきました。
相手をコントロールしようとする気持ちを放したとき、そのあり方が相手への良い影響力となってポジティブな効果を発揮するのです。
4.「あり方ファースト」のリーダーシップへ
「あり方」を整えることは、スポーツで言えば準備運動や体幹トレーニングのようなものです。
華やかなテクニックに比べれば地味で、時に苦痛を伴います。
しかし、組織の命運を握る経営層や管理職層にこそ、この「土台」が必要です。
リーダーのあり方は、組織の文化に直結し、社員一人ひとりの心理的安全性やエンゲージメントに、言葉以上の影響を与えます。
私は、これからも「あり方ファースト」なリーダー育成を愚直に説き続けていきたいと考えています。
スキルを詰め込む前に、自分は人として、どのような姿勢で他者と向き合うのか。
その問いに向き合う勇気を持つリーダーと共に、真に強い組織をつくっていきたいと願っています。
『組織を強くする実践知』
最新記事をメールでお知らせ!
✔ 無料
✔ いつでも解除OK
こちらから登録してください!
リーダー育成・組織開発の最前線から、あなたのビジネスを加速させる実践知をお届けします。

