経営者である知人は常々、「親は子供に金を残してやるのではなく、仕事を残してやるべきだ」とよく言っています。
自分の子どもに多額の財産を残すのではなく、仕事を残してやるべく親としてどうあるべきかと考えているのです。
これは、後藤新平が晩年に残した有名な言葉 「金を残すのは下 仕事を残すのは中 人を残すのは上」から来ています。
親子であれ、上司部下の関係であれ、後藤のこの言葉は様々なケースでそのまま使えると思います。
たとえば、マネージャーの仕事は「人を育てること」です。
しかし、「マネージャーの仕事は結果を出すこと」だとも言われます。
私は、「人を育てる=人を残す」「結果を出す=金を残す」と考えています。
ここでの「結果」とは「とにかく結果が出さえすれば良い」という前提で出された結果です。
「人を育てて結果を出す」がマネージャーの仕事だと私は考えます。どちらか一方ではなく両方です。「育てた人財で結果を出す」ことまでを完結させる。それがマネージャーの仕事です。
ですから、ただ結果を出せば手段は何でも良いわけではないし、人を育てただけで結果が出ていないようでは(本来はそんなことはあり得ないのですが。)マネージャーとしてのミッションを完結したとは言えないのです。
「まだ育ち切っていないメンバーに手をかけていたら結果は出ない。ついついマネージャーであるあなたが代わりに行動してしまい、結果は出すことができたけどメンバーは却って育たなくなっている。」
そんなことにはなっていませんか?
「メンバーを育てることに注力しているけど結果を出せるまでには育ち切っていない。だから結果が出ないコトは仕方がないと割り切っている。」
こんなことにはなっていませんか?
どちらも言い訳をしているにすぎません。
「育てて結果を出す」のがマネージャーの役割なのですから、どちらか片方だけではNGなのです。
さあ、あなたはどうしますか?
ただ結果を出すのではなく、「育てた人」でというところが重要なのです。
このことを、これまであなたはマネージャーとしてどれくらい真剣に考えてきましたか?
ああでもない、こうでもない、こうすればどうなるかなどのシミュレーションを立て、育成計画と目標達成計画を並行して戦略を練ったことはありますか?
私が人を残すことができなかったマネージャー時代には、育成計画と目標達成計画は、それぞれ別物でした。
両方行うためには、マネージャーであるあなたの考え方(戦略)にイノベーションを起こさなければならないかもしれません。
しかし、それこそがマネージャーの役割。あなたの仕事なのです。
折しも、サッカー女子アジア杯で見事連覇を成し遂げた高倉監督の帰国会見が印象的でした。
「私たちは今回、アジア杯を迎えるにあたって、3つの目標を立てていました。1つはW杯出場、もう1つは大会連覇。そして最後に、一番これが大事なことだと思っていましたけれども、チームと選手が成長するという目標を立てていました。最初の2つは結果が出たとおり、達成することができましたけれど、この大会を通してチームが成長したのかということに関しても、私自身はチームが粘り強く戦うことができるようになったと思います。今までなでしこで活躍してきた選手たち、ベテランになった選手たちと、若手がチームとしてひとつになり、グラウンドでなでしこらしく、粘り強い戦いができたということで、一歩、チームとして進んだのかなと思っています。」
金を残すは下 仕事を残すのは中 人を残すのは上
あなたは人を残すためにどんな工夫をしていますか?
単純に金を残すのではなく、人を残した上で金を残すための取組みを行っていますか?