論語塾に通っていた数年前、小さな子供たちが好きな章句の一つにこの「巧言令色、鮮し仁」がありました。
子供たちは意味よりもまず最初に音から親しむのですが、「こうげんれいしょく、すくなしじん」と短く歯切れのよい響きに馴染みやすさがあるようです。
しかしそればかりではないようです。
「口先だけの人はだめよ」
「嘘をつく人はいけない人」
と至極当たり前なこの章句の意味は、子供にもいたって理解しやすく、純粋な心の彼らにはお気に入りの章句になるのは必然なのかもしれません。
この「巧言令色、鮮し仁」が頭をよぎる事柄が、最近いくつかありました。
「調子のいい事ばっかり。そんなこと、全然心の中では思ってないくせに~。よくあんな歯の浮くようなこと言えるなぁ。」なんて思ったりしました。
世の中的には先ごろ辞任した大臣や副大臣がそうです。
ご本人に明確な悪意はなく、その場のノリで、ウケを狙って調子の良い事を言ってしまったのかもしれません。
しかしそれを聞く人が聞けば、誰かを傷つけるかもしれないし、調子が良いだけの上っ面な言葉に過ぎず、逆に発信者の品性を疑うことになるのに気がつかないのですから悲しい限りです。
「政治家にお調子者はいらないよ!」とテレビ画面にブツブツと言っていたのは私だけではないと思うのですが・・・
その人が本当に自分のことを思って言ってくれているのかどうか、ちょっと話をすれば分かるものです。
言葉巧みに上手いことばかりを言うのが良いのではありません。
口下手で恥ずかしがり屋で、それでも心根が優しく思いやりのある行動を取れる人の方が遥かに人として素敵です。
まさに「剛毅木訥、仁に近し」です。
人のふり見て我が振り直せ
他人を批判するのではなく、自らの襟を正さなければなりません。
私もどちらかと言うとお調子者の部類に入ります。
浮かれている時、心がざわついている時、怒り心頭の時などは、おかしな言葉を発してしまう可能性は多分にあります。
だからこそ、日頃から言葉(技術)を磨く前に、まず心(ベース)を整えなければいけません。
口先だけの人よりも心で行動できる人の方が、誰が何と言おうと素敵に決まっているのですから。