その他

決定するのはお客様

とても自信のある商品。実際に良い商品です。
そのアピールをひたすら話し続ける営業マンのKさん。
Kさん自身が商品にとても惚れ込んでいて、良いものだからお客様にもぜひ使ってほしい良いと心から思っている、その強い思いはよくわかります。
しかし、とにかく一方的に話し続けているんです。
聞いている方はとても疲れます。
「もうわかったよ。ちょっと黙ってて。うるさいなぁ。」と言いたくなってしまうのです。

とても一生懸命なKさんなので、最初は頷きながら話を聞いていた私ですが、ついにたまりかねて言ってしまいました。
「Kさん、Kさんが熱く喋れば喋るほど、契約意欲が薄れていくんだけど・・・」

機関銃のように話していたKさんの口が、ぴたりと動きを止めました。

「あのね、気持ちはよくわかるんだけど、押し付けられるのは心地よくないんだよね。そんなつもりはないんだろうけど、Kさんが熱く語れば語るほど、そう感じちゃうんだよね。」

「すみません・・・。よく言われます・・・」

私が初めてではなかったようで、Kさんはすっかり落ち込んでしまいました。

商品への思いがあるのは良い事です。
お客様に選んでほしいと思うその気持ちもとても大切です。
しかし、選択権、決定権はお客様の側にあります。
必要な説明を終えたら、あとはお客様に考える時間、疑問や不安を払拭するための質問の時間を取りましょう。
そしてあとは委ねる。
つまり、お口にチャックです。

喋り続けていないと不安だというKさん。
しかし、その不安を弾丸トークに変えてぶつけられるお客様の方はたまったものではありません。

不安になる必要はありません。
決めるのはお客様。そこをKさんがコントロールすることはできないのです。
どんなに完璧な説明をしたとしても、それがお客様のニーズとマッチするとは限りません。
やることやったらあとは待つ。「果報は寝て待て」なのです。

後日、Kさんと会った時、まるで別人になっていました。
押し付け弾丸トークはすっかりと影を潜め、分かりやすく丁寧な説明と客側への配慮があり、商品への愛情と自信もしっかりと伝わってきました。
メリットだけでなくデメリットの説明も早口でごまかすようなこともなく、しっかりと説明してくれ、そこにはKさんの誠意も感じられました。

「すごい!営業マンとしてすごく成長したね!」
私の言葉にKさんはニコリとして一言。
「お客様の決定を私がコントロールすることはできませんから。私ができることは、決定していただけるように最善を尽くすことだけ。それはひたすらしゃべり続けることではないとわかりました。」

営業マンとして本当になすべきことが何かをしっかりと理解することができたKさん。
熱意や愛情はすでに備わっています。
きっと、これまでの何倍もお客様に必要とされる良い営業マンになっていくのだろうと思いました。

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