毎年この時期になると、真新しいスーツに身を包み、心ときめかせて入社式に向かった時のことを思い出します。
当時から私は人と同じことをするのが嫌で、入社式は淡いピンクと白のチェックの上着とピンクのタイトスカートというGINZA Maggyのスーツ、それに同じくピンクのパンプスで参加しました。今ほど画一化していなかったとはいえ、濃紺や黒、グレーのリクルートスーツが多い中、ピンクのドレススーツはかなり目立っていたと思います。振返ってみたら、就職活動でも特にリクルートスーツを購入せず、メーカーこそ忘れましたが当時流行っていたD&Cブランドのグレンチェックのタイトスカートに麻のブラウススーツで会社訪問をしていたことを思い出します。入社前から相当、私は変わっていたのかもしれません。
配属になった支店では同期が7人でした。男性4名、女性3名。100名を超えた大所帯でしたので、7名はある意味結束していたかと思います。
配属後しばらくすると、同期のMちゃんが事あるごとに涙ぐむようになりました。同じグループのHリーダーが厳しい方で、それが辛かったようでした。今思えば、Hリーダーにおかしなところなど何もないのですが、当時の私たちにはHリーダーが厳しすぎるように感じました。現に、Mちゃんは毎日のように泣いている。Mちゃんは上司であるK課長に相談したようなのですが、特に何かが変わることもなく、毎日辛い日々を送っていました。
新入社員で隣の課に所属する私は、あろうことか、このK課長に意見したのです。
「K課長、ご存知ですか?Mちゃんは毎日泣いています。どうしてHリーダーに何もおっしゃらないのですか?HリーダーのようなワンマンリーダーをちゃんとマネジメントするのがK課長の仕事なのではないですか?K課長、課長としてしっかりとなさってください。」
全く、怖いもの知らずというかなんというか、よくもこんなことが隣の課の課長に向かって言えたものだと思うのですが、とにかく私はMちゃんを助けたい一心でこう言ったのです。
その時のK課長の反応は、驚いたようですが、「わかった。意見ありがとう。」と言っただけでした。
次の日、私は自分の直属のリーダーに話があると呼ばれました。
絶対に怒られる・・・。クビかも・・・・。良くて異動かな・・・。
そんな風に思っていたのですが、リーダーが私に発した言葉は違いました。
「お前は配属初日から思ったこと、感じたことを素直に口に出すことができる。自分の意見をしっかりと持っている。良いことだ。上司の顔色を見て、上司に都合のいいことだけをいうヤツとは違う。今のその感性を大事にしろよ。小さくまとまるな。 ただ、一つアドバイスするとしたら、目上の人には口のきき方を気をつけろ。同じことを言うのでもどう言ったら取り合ってもらえるのか、考えて話をしろよ。そうそう、K課長からの伝言。K課長はMちゃんがそこまで思いつめているとは思っていなかったらしい。『お前から話を聞いて気がついた。ありがとうと言っておいてくれ』と言われた。あと、付け加えるなら、Mちゃんを思う気持ちはわかるけど、少しは俺の顔も立てろよ。」
意見をぶつけたのがK課長で命拾いした。私はこのリーダーの下で良かった。この人のために頑張ろう! と思った瞬間でした。
そして、それからもどんどんと自分の意見を言うことに努め、他の課の先輩からは「生意気だ」と言われたこともありますが、そんなことは気にせずに、自分からの発信に努めました。
企業のマネージャーや人事の方からよく、こんな声をお聞きします。
「この頃の新入社員は優等生でつまらない。何が正解かを読み、それを自分の考えのように発信してくる。もっとハチャメチャに突き抜けてほしいのに。」
そう!会社は新入社員に正解を求めているわけでもなく、優等生であってほしいわけでもないのです。これからの会社を、将来をになう人材として、どんどん「突き抜けて」欲しいのです。だって、イノベーションを起こせるのは小さくまとまった優等生ではなく、どちらかというとハチャメチャなヤンチャさんだからです。
新入社員のみなさん。空気を読まず、どんどん自分を発信していきましょう!
マネージャーのみなさん。私の上司やK課長がそうであったように、危険すぎると思われる新入社員も深ーい愛情でしっかりと受け止めてあげてください。
そんな上司とメンバーが共にいるチームには、きっと明るい未来が開けているに違いありません。