上司が部下に「あなたはこの会社でどうしたいのか?」と問う。
これは一見、部下のキャリアや目標設定を促す前向きな問いかけに聞こえます。
しかし、この問いは時に、部下にとって「会社という限られた枠内だけで、自己の未来を考えろ」という制約として機能してしまいます。
会社が用意したレールの上でしか、未来を描けないという閉塞感を与えかねません。
問いの主語を変えるだけで、組織は自律に目覚める
組織の当事者意識(オーナーシップ)を引き出したいのであれば、問いの主語と視点を変える必要があります。
変えるべき問い:
「この会社でどうしたいのか?」 ➡ 「この会社をどうしたいのか?」
たった一文字の違いが、受け取る側の意識を根本から変えます。
| 問い | 主語(誰の視点か) | 目的語(何を変えるか) | 意味する制限/自由 |
| この会社でどうしたいのか? | 部下(個人)のキャリア | 会社の枠組み内 | 会社の枠に自己を合わせる「依存」 |
| この会社をどうしたいのか? | 会社(組織)の未来 | 会社そのもの | 会社を自ら創造・変革する「自律」 |
「この会社で」は、制限の中でのキャリアを考えること。
「この会社を」は会社の未来を自らが変革するという、制限を取り払った自由な発想。
部下は一気に「籠の鳥」から「変革の担い手」へと意識が切り替わります。
依存体質への具体的な対処法
もし「会社をどうしたいのか?」と問うても、一切反応が見られないとしたら、それは、依存体質に陥っているサインです。
変化へのエネルギーが枯渇し、「誰かがやってくれる」という意識が蔓延しているのかもしれません。
ここで必要なのは、さらに「当事者意識」を促す問いです。
自律へのスイッチを入れる問いかけ:
- 「あなたが社長だったら、この会社をどんな会社にしたいのか?」
- 「お金も時間も、権限も、能力も、必要な事は全て揃っている。この会社を、どうしたい?」
- 「あなたが考える『理想の会社』とは、具体的にどんな場所か?どんな会話がなされている?関係性は?今の風土の何があって、何はなくなっている?」
これらの問いは、現状の課題解決を強いるのではなく、「理想」を語ることで、内発的な動機と変革へのエネルギーを引き出します。
依存的な受け身の姿勢から、自律的な創造者としての立場に切り替わるのです。
行動の変容が、組織の確かな成長となる
自律への問いかけは、単なる精神論ではありません。
それは社員一人ひとりに「自分たちの行動が会社を変える」という実感を与え、結果として、組織全体のオーナーシップ、生産性、そしてエンゲージメントを向上させる、確かな成長戦略です。
真のリーダーシップとは、部下を従わせることではなく、部下の内なる力を引き出し、共に未来を創造することです。その一歩を、私たちは「問い」から踏み出します。
『組織を強くする実践知』
最新記事をメールでお知らせ!
✔ 無料
✔ いつでも解除OK
こちらから登録してください!
リーダー育成・組織開発の最前線から、あなたのビジネスを加速させる実践知を毎日お届けします。

