「他人の成功を素直に喜べないんです。イラっとしたり、たまたまの偶然、まぐれだよと思ったり。口では『おめでとう』と言いながら、心の中は相手を否定している自分がいるんです。」
こんなご相談を頂きました。以下、このご相談者:Aさんと私:Bとのやり取りです。
A: 先日、これまで一緒にやっていた仲間がずっと温めていた企画がついに通り、周りからもすごい称賛だったんです。私はこの話を聞いた時、すごくモヤモヤして、口では「おめでとう!ついにやったね!」と言うのですが、内心、妬ましく思っていたのです。
B:Aさんは、その方のことが嫌いなのですか?
A:いいえ。とても良いヤツで好きです。誰からも好かれて敵を作らない、本当に良いヤツです。
B:なるほど。そんな良い人の成功を素直に喜べなかったのですね?
A:はい。そうなんです・・・
B:それはAさんにとっていけないことなんですか?
A:そうです。だって、他人の成功を素直に喜べないなんて、嫌なヤツじゃないですか!口では上手いこと言って、お腹の中は違うんですよ。俺ってホント、嫌なヤツだと思って・・・
B:そうですか。Aさんはご自身のことを「嫌なヤツ」と思ったのですね?
A:はい。そうです。
B:この方以外はどうですか?この方以外の他の人の成功は喜べますか?
A:人によります。ものすごく後輩だったり、本当にダメなヤツがたまたま上手くいった時なんかは素直に喜べます。でも、後輩でも伸び盛りだったり、同期や先輩なんかだとダメです。あ、でも、先輩でもすごく尊敬している人なんかは思いません。「すごいな~。さすがだな~。」と素直に嬉しかったりします。
B:なるほど。面白いですね。素直に喜べる人とそうでない人がいるのですね。話を聞いていると、喜べる人とそうでない人は、Aさんの中でタイプ分けができているのではと感じたのですがどうでしょうか。「喜ぶ」という動詞を違うもの、例えば「応援する」と置き換えても同じかなとも感じましたがどうですか?
A:そうかもしれません。すごく尊敬していて、とてもかなわないけどあんな風になりたいと思っている先輩や、本当にとろくてどうしようもないんだけど一生懸命なヤツなんかは素直に応援できます。けど・・・・。自分と同じくらいか自分の立場を脅かしそうな感じの場合はダメです。
B:自分の立場を脅かす・・・
A:はい。あのですね、すごい突っ張ってるんですけど、本当は自分に自信がないんだと思うんです。だから、追い越されそうだったり、自分と比較対象になるくらいのレベルの相手に対して敏感になってしまうのかもしれません。比較対象にならない両極端の相手には全くイライラの針は触れないので。
B:すごく正直に話してくれてありがとうございます。Aさんとの比較の相手に対してセンサーが敏感になってしまうわけですね。
A:はい。きっとそうなんだと今、話していて思いました。
B:ところでもう一度伺いますが、他人の成功を素直に喜べないことは悪い事なのですか?
A:え? そうじゃないんですか? すっごいイヤなヤツじゃないですか。そう思いませんか?
B:誰もに等しく心からの称賛を贈ることができるのは素晴らしい事だと思いますが、誰もがそうではないと私は思うのですが。Aさんは、そんな風に思う自分を何とかしたい、変えたいと思っているのですか?
A:はい。確かに聖人君子みたいかもしれません。ただ、「嫌なヤツ」だと自分で思うのが嫌なんです。できれば、ライバル関係にある仲間にも心からの称賛を贈ることができたら、自分自身の心がどんなに穏やかで安らかで、そんな自分が好きになることもできるように思います。
B:つまり、今のお話は、Aさんは自分で自分の事を「嫌なヤツ」と思うのではなく、自分自身を好きになりたいということですね?
A:ああ、そうです。
B:ところで私自身、Aさんと同じような悩みがあって、人の成功を妬ましく思ってしまい、そんな自分がすごく嫌で嫌で仕方ないんです。そんな私にAさんは何と言葉をかけてくれますか?
A:え?そうなんですか?でも、Bさんはいつもすごく一生懸命で、温かく包み込んでくれていますよ。心の中では人の成功を妬ましく思っているかもしれないけど、それを修正しようと必死で取り組んでいるからなのか、僕らからはそんな様子はちっともわかりません。いつもみんなに平等にしてくれています。そんな風に、自分で自分の見たくない面もしっかりと受け止めて前向きに進んでいるのは、それだけでもう素晴らしいと僕は思いますよ。
B:ありがとうございます。Aさんに良いところをたくさん挙げてもらって、とても嬉しく思いました。本当にありがとうございました。ところで、今、Aさんが私に対して言ってくれたことですが、すっかりそのまま、ご自身に当てはまりませんか?自分の見たくない面もしっかりと受け止めて前に進んでいるのはそれだけで素晴らしいというところ。必死で取り組んでいる姿勢が素晴らしいというところ。Aさんこそ、そのものズバリでそうだと思いますが。ご自分のネガティブな面だけでなく、自分を好きになりたいということであれば、ポジティブな面も見つめてみませんか?
A:ポジティブな面ですか・・・ 考えたこともありませんでした。劣等感強くて・・・。でも、人の成功が素直に喜べないのは自分への劣等感から来ているんですね、きっと。負けたくない、遅れたくないと常にイライラするのではなく、自分を好きになるともっと精神的に楽になれるのかなぁ。
B:そうですね。きっと気持ちにゆとりというか余裕が生まれるかもしれませんね。いっつもイライラしていたら辛いですよね。
A:はい。そうなんです。本当に。自分を好きになれたら、もっと色々な見方も変わってくるんだろうな。
B:はい。きっとそうですね。そのためにも、Aさんは自分をもっと好きになる。もっと自分の良い面をたくさん見つける工夫をしてみるのはいかがですか?
A:はい。でも、僕に良いところあるでしょうか・・・
B:ほらまたぁ。たくさんありますよ。第一、こんなセンシティブな内容をストレートに話してくれた、その事だけでも素晴らしいですよ。周囲の人に聞いてみてはいかがでしょうか?その時に、「え?違う」とか「またまた、お世辞言って~」とか言わないで、素直に受け止めて下さいね。周囲の身近な人が感じている事は、本当に当たっているものですよ。本当の自分は、自分で感じている自分ではなく、他人から見えている自分の方が正しいとも言うじゃないですか。是非、他の人の意見も参考に、自分の良い面をたくさん見てください。そうすれば、他人の成功を無理に喜ぼうとしなくても、自分を好きになることによって気持ちに余裕ができて、自然と相手のことも喜べるようになるかもしれませんよ。そうなったら、本当に素敵なことですよね。
A:はい。イライラしたり、常に何かに焦ったりした感じから抜け出したいです。まずが良いとこ探しから始めてみます!
自分で自分があまり好きではないというAさん。お話していて、過去の私自身とダブるところが沢山ありました。
自分で自分の事を愛せない人は、他人を本当に心から愛することも難しいのではないでしょうか。そんな状態から発せられる言葉や行動は、どこか歪んでいたりいびつなものになってしまうことも、もしかしたらあるかもしれません。
良いところもそうでないところも等身大のありのままの自分を受け入れて愛する。そうできることで、自然と他人にも愛情溢れる関り方ができるようになるのでしょう。
Aさん 頑張って! 心から応援しています。