Aさんは真面目で何事も一生懸命な人なんだよね。
あなたがAさんに対してこんな風に思っていたとしたら、
万が一、Aさんからのトラブル報告がなかったり、
無断欠勤をしたりということが起きたとしても、
「何かあったの?」
「困ったことでも起きたのかな?」
と声をかけるでしょう。
Bさんは見てないところでは手を抜くし、だらしない所があるんだよね。
あなたがBさんに対してこんな風に思っていたとしたら、
万が一、Bさんからのトラブル報告がなかったり、
無断欠勤をしたりということが起きた時、
「ちゃんと報告してね」
「寝坊でもしたの?」
と言うかもしれません。
面白いもので、人が発する言葉は、
どんなに気をつけて意識していても、
その人の前提が言葉づかいに表れます。
相手の可能性を信じていたら、そのようなフレーズになるし、
相手にバッテンをつけていたら、そのようなフレーズになるものです。
そして、言葉を受け取る側は無意識の中で、
自分は尊重されている、自分は否定されている、
と感じるのです。
可能な限り、
マネージャーはメンバーに対して良い前提で相手を見ていたいものです。
仮に、Cくんはメンタルが弱い、Dくんは思いやりにかける、
などと感じる事実があったとしても、
Cくんは繊細で人の気持ちがよくわかる
Dくんはストレートにモノを言えるところが長所であり、
そこに強弱をつけることができるようになるとさらに良くなる、
などと、ポジティブな良き前提でメンバーを見てほしいのです。
顧問契約を頂いている数社のお客様からよく頂くお言葉の中に、
「尾藤さんには本音を話すのに、僕らとはやっぱりまだ壁があるんだよね」
というものがあります。
これらはテクニックによるものではなく、「私が相手をどのように見ているのか」
によるものが大きいのではないかと思っています。
もちろん私は評価者ではないので、
その分、皆さん、自由に話ができるということはあるかもしれません。
しかし、レポートが会社に上がることを知っているわけですから、
そこを考えると評価云々だけではないとも思います。
私がコーチングやコンサルティングを行う際に最も意識している事は、
「コーチはクライアント以上にクライアントの可能性を信じる」
そして、
「良き前提で相手と物事を見る、捉える」
ということです。
そうすれば、言葉遣いも雰囲気も、おそらく表情や身振り手振りは、
ネガティブにジャッジされた相手にとって好ましくないそれとは大きく異なり、
相手の心の深い所に染み入っていく、響き行っていく、
そんな不思議な力を発揮するのです。
Eくんは部下に対して威圧的なのではなく、マネジメントのコツを知らないだけで、
部下の成長を本気で願っていて、人一倍、メンバー育成について考えているし、
Fくんは温かみに欠けるのではなく、気持ちを表現する言い回しがうまくないだけで、
心根は優しく、相手の感情に対して実はとても敏感に受け取っているのです。
相手をネガティブにジャッジするのではなく、
より良い前提で相手を見る。
そうすることで、自然とあなたの表情も、言葉遣いも変わってきて、
おまけにメンバーの言動もより良いものに変わってくるはずです。
もし今、メンバーに対して「ちょっとここは困ったちゃん」というところがあったとしたら、
それはもしかしたら、あなたのメンバーに対するネガティブな前提が
メンバーにそういう態度をとらせているのかもしれません。
あなたの前提がメンバーの言動を左右するのです。
だとしたら、より良い前提を持たない手はないというものです。