とあるクライアント企業の話。
現場でちょっとした“有名人”になっている女性社員がいた。
仕事は真面目にこなすけど、いつも感じが悪い。
不愛想。とっつきにくい。
あちこちで「あの人、なんとかならないの?」と陰で言われている。
でも私には、彼女は普通に笑顔を見せてくれるし、ちょっとした世間話だってしてくれる。
旅行に行ったからとお土産ももらった。
「え、あの人が笑うの?」「話すんですか?」と驚かれることもしょっちゅうだ。
そんなとき、私はよくこう言う。
「彼女が不愛想なのは、彼女のせいじゃないかもしれませんよ」
実際、過去に職場で“何か”があったらしい。
本人が多くを語らないから詳細はわからないけれど、周囲の空気や対応を見る限り、
彼女の態度をつくったのは職場側の空気や人間関係だったんじゃないかと思っている。
「やることはやっているけど、感じが悪い」は何を意味するか
こういう話、どこの職場にも一人はいるかもしれない。
「ちゃんと仕事してるけど、感じ悪い人」。
でも、その“感じの悪さ”は、単なる性格の問題だろうか。
やるべきことはやっているけど、不機嫌。
それは、組織の未対応の結果である。
それは
- エンゲージメントの低下
- 心理的安全性の欠如
- サポート体制の不在
こういった“構造的な放置”が、無言のかたちで現れている状態。
不機嫌は、組織の声なき悲鳴かもしれない。
部下を責める前に、鏡を見よう
部下の態度が気になったとき、
「なんだその態度は」と言いたくなる気持ち、よくわかる。
でも、その前に立ち止まって考えてみてほしい。
その“やる気のなさ”、あなたの影響かもしれない。
あなたが放っている空気感。
あなたの沈黙、言葉の圧、冷たい目線、上の空のリアクション。
日々のその積み重ねが、部下の「やる気」を少しずつ奪っている可能性はないだろうか。
人の感情は伝染する。
「職場の空気」は、上司の背中でつくられている。
自分が“源”であるという覚悟
私が現場を見ていて痛感するのは、
「部下を変える前に、自分のあり方を整えられる人」が、結局は一番強いということ。
態度の悪さ、やる気のなさ、不機嫌さ。
それは、部下の問題であると同時に、
その人をそんな状態に追い込んだ「職場」の問題でもある。
そして、職場の空気をつくっているのは——間違いなく“上司”である「あなた」だ。
あの女性社員は、私には笑ってくれた。
それは「私だから」ではなく、
“安心できる相手には笑える”という当たり前の反応だったのかもしれない。
人は、関わる相手によって、態度も感情も変わる。
やる気があるように見える人もいれば、ないように見える人もいる。
でもそれは、見る側の“関わり方”次第で、ぜんぶ変わるのかもしれない。
部下の態度が気になったら、こう問いかけてみてほしい。
「彼が変わるべきなのか?
それとも、私が変わるべきなのか?」
答えは、案外シンプルだったりする。
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