戦略人事

その決算書、人事がどう読む? “数字の裏にある人の変化”に気づけるか

4月——新年度のバタバタが落ち着いてくると、
ちらほら聞こえてくるのが「前年度の決算どうだった?」という声。

売上がどう、利益がどう、株価がどう。
メディアでは数字の話が飛び交うこの時期だけど、私はふと思う。

「この決算書、人事がどう読んでるかは、あまり語られてないな」と。

「人事は数字に弱い」などと言われがちだけど、
実は数字は、人と組織の変化がぎゅっと詰まった“成績表”だと思う。

決算書は、“人と組織の通信簿”でもある

たとえば、あなたはこんな数字の変化をどう読む?

  • 営業利益率が急に落ちた
     → 成果が出づらくなってる? 現場が疲弊してる? 離職率が上がってる?
  • 販売管理費が跳ねた
     → 採用コストが高騰? 中途入社の定着が悪い? 育成コストが無駄打ちになってない?
  • 売上は好調なのに、利益はほぼ横ばい
     → 現場がキャパ超えてない? 新人の戦力化が追いついてない?

もちろん、数字だけを見て判断はできないけど、
「この変化の裏に、どんな人や組織の動きがある?」か、仮説を持つことが大事だ。

これは、まさに戦略人事の出番なんじゃないかなと思う。

“数字を現場に返す”のが人事のしごと

決算説明会で発表された数字。
経営層は戦略を語る。
でも現場は、「で、ぼくたちに何が起こるの?」と、実はよく分かっていなかったりする。

ここで大事なのが、人事が“翻訳者”になること。

たとえばこんな風に。

  • 「売上が前年比115%
    → 期待も負荷も増える。評価と育成のバランスを今こそ見直そう」
  • 「営業利益が落ちた
    → 単に“頑張れ”じゃなく、どこでエネルギーが消耗してるのか、仕組みの視点で捉えよう」
  • 「採用費が前年比200%
    → 採ってるだけじゃなく、育てる“土壌”が追いついてるかをチェック」

経営の数字を、現場の言葉にして返す。
それができる人事は、現場からの信頼が大きくなると思う。

「売上が伸びた。でも、現場は静かに壊れかけていた」

ある会社で、売上が前年比120%に伸びたタイミングで、
現場に少しずつ“異変”が起き始めていた。

直接的なメンタル不調者が出ていたわけではない。
でも、1on1での反応が鈍くなったり、社内チャットの返事が極端に短かったり、
何よりも、
“辞めたいわけじゃないけど、ここに居続けたくはない”という空気が、静かに蔓延していた。

外部コンサルとして関わっていた私は、
「あ、これは“退職予備軍”が育ってきているな」と感じた。

だからこそ、経営層に早めに進言した。
「組織全体として“静かな離職”が進みつつあります」と。
でも、そうした予兆は数字には出にくい。受け取る側によっては、
「え?そんなに深刻なの?」という反応になることもある。

そして、もし未然に防げれば、
「ほら、何も起こらなかったじゃないか」と言われる。

でも実際に、数ヶ月後に数名の退職が重なると、
「もっと強く言ってくれたら…」と残された側が言う。

この見極めは、正直、外からのコンサルだけでは限界がある。
だからこそ、内部の人事が“数字に出る前の気配”をどう捉えるかが、
組織の未来を左右すると思っている。

「何も起きない」ことが当たり前に見えるかもしれない。
でもその“当たり前”を維持するために、
人事は今日も、静かに、必死に、現場の声を聴いている。

人事が“数字に強い”と、会社は変わる

人が変われば、組織が変わる。
それは間違いないけれど。

私は最近、それと同じくらい、
「数字の裏に、人を見る力」が人事にとって大事だなと感じている。

数字を“評価”で終わらせず、
数字から“対話”を生み出せたとき、
人事は経営のど真ん中に立てる。

新年度最初の決算書を眺めながら、
そんなことを改めて考えた今日この頃だ。

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