友人が旅先で量り売りのお菓子を買った時のことです。
既にお菓子が入っている袋の口を開けて、「オマケしておくね。」とさらに一掴みのお菓子を店の女主人が足してくれました。「このお店には次も絶対に来る!美味しかったら皆にも紹介してあげよう!」と思ったそうです。ところが帰宅して何とはなくその袋の重さを測ったところ、オマケしてもらっているはずなのに、重量は値札の重さ。つまりオマケは嘘であり、最初から一掴み分少ない量しか入っておらず、オマケはパフォーマンスだったようなのです。「信じられない!」「もう絶対にあそこには行かない!」「オマケとか言って嘘つくなんてお客をバカにしてるわよね!」と憤慨していました。帰宅後に袋の重さをわざわざ測った彼女のチャッカリ具合に笑ってしまいましたが、これはまさに人の心理を突いた面白い例だと思いました。
人は誰しも裏切られることを厭うものです。裏切られたいと思っている人はいないでしょう。
「信用第一」「利よりも信」などとよく言われていますが、人も企業も皆等しく「信用」が何よりも大切だと知っているからの言葉なのです。
ところで、あなたはお客様、会社の仲間や関係先、家族や友人などに対して、100%の信を貫いていると胸を張って言い切れますか?
裏切らず、傷つけず、場合によっては損をしているように見える。しかし、そういう人や企業が、最終的には愛される人・企業なのではないでしょうか。
最初はちょっと損をしているように感じても、そういう人や企業が最終的には利と幸福を得ることができるのでしょう。だって、誰もが自分たちは裏切られたくない、傷つけられたくないと思っているのです。ですから自分を絶対に裏切らない、傷つけない相手を大好きでないはずがありません。
子供が自分の親を大好きなのは、絶対に自分を裏切らない存在だと知っているからなのでしょう。
同じチームのメンバー同士や会社の社員同士が同様の気持ちでいることができたらどんなに素晴らしい事でしょう。取引先や関係先に対してもそのような気持ちを持つことが出来たら、本当に素晴らしいに違いありません。
そのためには・・・
みんながそれぞれ、ほんの少しずつ損をしてみることではないでしょうか。
何も金銭的に損をするということではありません。
掃除をする時は自分のところだけでなく両隣まで。挨拶は受ける(待つ)のではなく立場など関係なくこちらから。笑顔もこちらから。ちょっとしたことなら謝るのもこちらから。
〇〇してくれた人(会社)には〇〇するのではなく、相手がどうであれ、こちらから必要なコトをするのです。挨拶、感謝、謝罪、尊敬や敬意、祝う気持ちや哀悼の気持ち。物理的なモノだけでなく、沢山のコトがありますね。
心にほんの少しの余裕を持つことで、自分が相手に対して少しだけ多く与えるモノ・コトがたくさんあるはずです。それを実践してみてはいかがでしょうか。きっとそれらがお互いの関係性に「信」をもたらし、互いに裏切ったり傷つけたりすることのない関係性を築いていくのかもしれません。
冒頭の友人が買い物をしたお菓子屋さんの例で言えば、本当にオマケをしてくれたのであれば、お店にとってはほんの少し損をしたことになります。しかし、その結果、ファンを増やし、口コミで新たなお客様が増えるきっかけとなり、結果的にはお菓子屋さんはオマケ分の損失を遥かに上回る利益を出したかもしれません。
敵を作らず信を得るには、相手に対して少しだけ余分に与えること、ほんの少しだけ損をしてみることなのです。
企業の不祥事や家族関係の崩壊による悲惨な事件の報道に触れるにつけ、自らは相手を裏切らず傷つけず、敵を作るのことのない無敵の経営・無敵のマネジメント・無敵の暮らしを実践しようと思うのです。