戦略人事経営幹部育成

「経営層がブレている」と社員が感じる理由|朝令暮改との違いと信頼を守る伝え方

「うちの経営層は言うことがコロコロ変わる」
「上司は朝令暮改だから信用できない」

現場でこうした声を耳にすることは少なくありません。
経営層や上級管理職としては、意図的に柔軟な判断をしているつもりでも、現場には「ブレている」と映ってしまう。このギャップは、組織の信頼や推進力を損なう要因になり得ます。

では、部下が「上司はブレている」と感じるのは、具体的にどのような場面なのでしょうか。

1.手段変更の説明不足

経営判断において、ゴールは変えずに手段を変えることはよくあります。
市場環境の変化やリソースの制約に応じて、最適な方法を選び直すのは当然のことです。
しかし、その変更の「背景」や「意図」が十分に説明されないと、現場には「昨日と言っていることが違う」と受け取られてしまいます。

「なぜ変えたのか」「何を重視しているのか」を言語化することが、信頼の維持には不可欠です。

2.言葉の揺らぎによる誤解

同じ意味のことを、異なる表現で伝えると、受け手は「方針が変わった」と誤解することがあります。

たとえば、「お客様第一主義」と言っていた経営層が、ある日「提案力を上げろ」と言い出すと、現場は「売上重視に方針転換したのか?」と受け取るかもしれません。
実際には、「お客様のためになる提案力を高めよう」という意図だったとしても、言葉の選び方ひとつで、メッセージの一貫性が揺らいでしまうのです。

経営層は、言葉の精度と一貫性に細心の注意を払う必要があります。

3.意思決定の軸が見えない

最も深刻なのは、意思決定の背景にある「軸」が見えない場合です。
理念や戦略が曖昧なまま、場当たり的な判断が続くと、部下は「この人には芯がない」と感じます。
これは単なる誤解ではなく、実際に経営判断が迷走している可能性もあります。

軸があるかどうかは、言葉ではなく行動と一貫性で示されます。

朝令暮改は悪ではない

ここで誤解してはいけないのは、「朝令暮改」そのものが悪なのではないということです。
むしろ、環境変化に即応できる柔軟性は、現代の経営において重要な資質です。
問題は、変更の「伝え方」と「納得感」です。

変化を恐れず、かつその理由を丁寧に伝えることが、信頼を損なわない朝令暮改の条件です。

「ブレている」と思われることのリスク

一方で、「ブレている」と思われることには明確なリスクがあります。
部下は、上司の言葉や行動に一貫性がないと感じると、尊敬や信頼を失います。
これは、指示の実行力や組織の推進力に直結します。

また、意思決定の質そのものに疑念を持たれると、経営層としての影響力が低下します。
信頼は、言葉ではなく「一貫性」と「納得感」で築かれるのです。

経営者が信頼を守るためにできること

では、経営層は何に気をつけるべきでしょうか。
以下の3点は、現場との信頼関係を築くうえで重要なポイントです。

  1. 意思決定の背景を言語化する
    「なぜこの判断をしたのか」「何を重視しているのか」を明確に伝える。
  2. 表現を統一する
    同じ方針は、同じ言葉で繰り返し伝えることで、メッセージの一貫性を保つ。
  3. 変更時は“なぜ今変えるのか”を説明する
    変更の理由と、変えない部分(軸)をセットで伝えることで、納得感を生む。

経営層が「ブレている」と思われることは、組織の信頼を損なうだけでなく、経営判断の実行力を低下させます。
朝令暮改を恐れる必要はありませんが、「軸を持ち、言葉で伝える」ことが、信頼される経営者の条件です。

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