経営幹部育成

「すること」と同等以上に「しないこと」を決めるのが大切な理由

「対策」や「取り組み」を考えるとき、私たちは何かを「する」ことを考えますが、「しない・やめる」ことを考えることも大切です。

首都圏を中心に法人への宅配弁当事業をおこなっている玉子屋は、その卓越したビジネスモデルで有名ですが、「事業に失敗するコツ」として、「しない」ことを説いている企業理念でも有名です。

【玉子屋の経営哲学】
1、 旧来の方法が一番良いと信じていること
2、 もちはもち屋だとうぬぼれていること
3、 ひまがないといって本を読まぬこと
4、 どうにかなると考えていること
5、 稼ぐに追いつく貧乏なしとむやみやたらと骨を折ること
6、 良いものはだまっていても売れると安心していること
7、 高い給料は出せないといって人を安く使うこと
8、 支払いは延ばす方が得だとなるべく支払わぬ工夫をすること
9、 機械は高いと云って人を使うこと
10、 お客は我がまま過ぎると考えること
11、 商売人は人情は禁物だと考えること
12、 そんなことは出来ないと改善せぬこと

玉子屋がお弁当を届けているのは、日本経済・世界経済を支えている会社であり、そのような会社で働く人達が「午後からも頑張ろう」という活力を提供するのが、玉子屋の存在価値であり、単なる弁当屋ではなく、社会貢献企業であるという誇りが働く人達のモチベーションを大きく向上させています。
自分たちの存在価値に共感し、「しない」哲学を守れば、あとはお客様のことを思ってであれば何でもOKという権限移譲は、やる気のある社員の行動の質を一層上げていきます。
そこにはリーダーの懐の深さと、社員との信頼関係があって初めて成り立つ、トップとしてのあり方を垣間見ることができます。

同様に「しない」経営方針を貫いている会社に、富山県高岡市で伝統工芸 鋳物メーカーとして大きな成功を収めている株式会社能作があります。
能作の「しない哲学」は以下の4つです。

・儲けを優先しない(儲けよりも、楽しむことを優先する)
・社員教育をしない(教えるのではなく、自分で気づかせる)
・営業活動をしない(営業する側ではなく、営業される側になる)
・同業他社と戦わない(競争ではなく、共創する)

能作は「伝統産業に轍をつける」を理念に、地元に愛され、誇りに思われる、モノづくりからストーリーを提供することで日本の「本当の価値」を伝えようとしています。

玉子屋も能作も、企業理念実現のためのTo Doは、「しない」ことです。
人間は目的到達、目標達成を考えるとき、「すること」を考えます。しかし、「しない」ことを決め、かたくなに守り、それ以外はOKとする方が、実は効果的な場合もあります。
なぜならば、どんなに効果的「すること」を取り組んでも、たった一つの破壊的な「Do」が邪魔をすることがあるからです。そうであれば、「すること」を行う前に、破壊的な「Do」をやめた方が賢明です。

「すること」と同じくらい、「しないこと・やめること」を考え、実行することが大切です。ビジネスも育成も「絶対正解」は存在しないが「致命的間違い」は確かに存在します。そうであれば、「しないルール」を守るほうが、ゴールにたどり着くのはもしかしたら早いかもしれません。

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