童門冬二さんの著『「人望力』の条件 歴史人物に学ぶ「なぜ、人がついていくか」』の中に、江戸中期の名君と言われた熊本藩主 細川重賢が、藩校 時習館の初代学長に伝えたという「人づくりは木づくり」のエピソードが何ともしっくりときています。
「人づくりは木づくり」とは・・・
人を教える存在は、国家の名大工である。名大工は、材木になってから木を見るのではなく、苗木のうちから凝視している。最初に名大工が行うのは“木くばり”である。
木くばりというのは、育てる相手が何の苗木なのかを確認すること。スギなのかヒノキなのかケヤキなのかイチョウなのか。育てる相手の性格や能力は色々と違います。それを十把ひとからげに教えることは間違っている。木くばりをすれば木の種類が違う。それぞれに対して肥料はどれがいいか、剪定や枝の手入れはどうすれば良いか。
育てる側はこれを確認し、その相手の生命と可能性を伸ばすようにしなければいけない。
また、こんなことも重賢は言ったそうです。
教育は、大きな川の前に立った連中を向こう岸に渡してやるために、川を渡る知識と技術と勇気を与えること。
川を渡すとなると、育てる側はすぐ橋を架けることを考えるが、橋を架けるには道が必要。しかし、育てられる側が常に道のあるところにいるとは限らない。川上だったり川下だったり。
つまり、本当の教育は、本人たちのいる場所(能力)に応じて、そこから向こう岸に渡る方法を教えることだ。
メンバー育成にもそのまま当てはまりますね。
ついつい忙しさにかまけて「十把ひとからげ」になっていないでしょうか?
苗木が育つには時間がかかりますが、じっくりと見守っているでしょうか?
そもそも、名大工になろうと努力しているでしょうか?
早く川を渡らせるために、代わって橋をかけたりしていないでしょうか?
人づくりは木づくり
マネージャーはチームづくりの名大工でありたいものです。
そのためには苗木を見る目を養い、愛情を持って育てていく気持ちを忘れずにいたいですね。