売り言葉に買い言葉。
虫の居所が悪い? 今日はなんだか調子がイマイチ?
良かれと思ってサポートしているのに、こちらの気持ちなどお構いなしに「そんなの必要ないです!」とつっけんどんな返事のSさんに、Yマネージャーはプッツンしてしまいました。
「だったら好きにしたら? もう金輪際知らないから!」
「いいですよ。好きにします。」
自分の頭のてっぺんから湯気が出ているのがわかるほどにカッとなってしまったYマネージャー。
いけないと思いながらも自分の顔つきが恐ろしく変化しているだろうことがわかります。
「きっと、今、スゴイ顔してるんだろうな・・・」
そう思いながらもSさんに対するイライラが収まりません。
考えれば考えるほど腹が立つ。
全くぅ・・・
しかしここから先がYマネージャーの成長したところです。
「またやっちゃった・・・。これをSさんのせいにしちゃいけないんだよね。自分が未熟なんだ・・・。『良かれと思って』はこちらの勝手な言い分なんだよね・・・」
何度も何度も自分に言い聞かせます。
一人ブツブツ呟いているその姿に、YマネージャーとSさんのバトルを見ていた他のメンバーも、「どうしたんだろう、Yマネージャーは?」と不思議宇に感じているようです。
「さっきは言い過ぎた」とは言い出せないYさん。
どうしたもんだろう。Sさんから言い寄って来るとは思えない。第一、今も憮然としているし。
Yマネージャーの心の中で様々な葛藤が起こりました。
このまま外出したら夕方まで気まずいままだよね、きっと。
いや、Sさんの事だからいつもそんなことは忘れて平気かも。知らん顔してようかな。
色々と考えるYマネージャーですが、たとえ時間と共にSさんはケロリとしたとしても、その間、自分はずっとモヤモヤしているのだろうし、そういったなし崩し的な解決(?)が自分にはしっくりこないと思いました。
そうこうしている間にZさんと一緒に外出する時間になってしまいました。
「Zさん、そろそろ行きましょうか。」
Zさんに声をかけると同時に、穏やかなトーンでYさんはSさんにも声をかけました。
「Sさん、行ってきます。夕方まで戻りませんが、その間、新人メンバーたちのことお願いしますね。」
「はい。分かりました。いってらっしゃい!プレゼン、頑張ってください!」
Sさんは最初は少し気まずそうでしたが、すぐに普段通りの調子で返事が返ってきました。
良かった。自分から声をかけて。
ほっと胸を撫でおろしたYマネージャー。
言い争いなどしないことに越したことはありません。
しかしやってしまったのであれば、それをいつまでも悔いていたり相手が悪いと怒っていても何も物事は好転しません。
自分から先に謝ったり声をかけるなんて、負けるみたいでイヤだ! という人もたくさんいます。
けれども、こんなちっちゃな場面で勝った負けたと、それが一体何の意味があるでしょう。
負けてあげればいいのです。相手に花を持たせてあげればいいのです。
もちろん、自分の方が悪かった、ひどい言い方をしてしまったと思うのであれば、素直に「ごめん」と言えばいいのです。
いつまでも断絶状態を続けたり、勝手に悶々としていたり、そんなことは愚の骨頂。
自らがチームと自分自身に負のオーラ=毒素をまき散らしているに他ありません。
そうではなくハッピーオーラ=良い風=良い影響をチームにもたらしてください。
そのためには「競わない」「素直になる」「ゴール(目標)を忘れない」が大切です。
YさんのゴールはSさんに勝つことではなく、チーム目標を達成して会社1番の営業チームになり報奨金でメンバー皆でハワイへ行くことです。
そしてそれはすなわち、お客様へ最も貢献できたチームであり、メンバー全員の成長の証でもあるのです。
Sさんの返事にほっと胸を撫でおろしたYさん。
いつまでも拘らずに普通に対応してくれたSさんに、Yさんは心の中でそっとお礼を言いました。
「Thank youね。マネージャーとしてまだまだ未熟だけど、引き続きよろしくね。」