かつての私はメンバーの報告や連絡のスピードが少しでも私のペースに合わないと、こちらから「あれ、どうだった?」と質問をしていました。
「報告してよ!」ではなく、「あれ、どうだった?」とこちらから訊ねているので、別に問題はないだろうと思っていたのです。
ところがある時、なんでも話をしてくれるメンバーから
「尾藤さんはせっかちなんだからぁ。」
と言われました。
せっかち? そっちが遅いのよ。こっちは忙しいんだから!
と言いたいところをグッと我慢して、「そうかなぁ」と答えたところ、
「急かされている気がして、ますます焦る」
とのことでした。
こちらにそんな気がなかったとしても、いえ、実のところはメンバーの報告を待てずにこちらのペースで求めに行ったのですから「急かした」と取られても致し方ないのかもしれません。
マネージャーのペースに配慮してほしいんだよなぁ。
と心の中では切に願うのですが、メンバーにはメンバーのペースがあるわけですし、急かして雑なザル報告を聞くのでは意味がありません。
それ以来、私は「待つ」ことにしました。
可能な限り待つ。
出来る限り待つ。
「待つ」という行為は、私の苦手3本指に入る事柄ですが、とにかく頑張って「待つ」ことにしました。
すると不思議なもので、報告してくれたり、連絡してくれたり、もちろん相談してくれたり、それらの事柄が「あたりまえ」ではなく、とても「ありがたく」感じられるのです。
それは、満腹状態の時に具も何も入っていない塩結びを食べても大した感動はありませんが、空腹状態の時に、たった一個の素朴な塩結びがとてつもなく美味しく感じられる、その感覚に近いかもしれません。
うわぁ、わかりやすく報告してくれてありがとう!
忙しいのに、すぐに連絡してくれてありがとう!
大事になる前に抱え込まずに相談してくれてありがとう!
大げさではなく、心から「感謝」の気持ちが湧いてきて、メンバーのホウレンソウの度に、「ありがとう」が自然に口をついて出てくるようになったのです。
すると、私も嬉しいけど、メンバーも嬉しい?
どんどん報告が丁寧になったり早くなったり、私が理解しやすい箇条書きや図解(長い文章は苦手です)になったり、取り急ぎの連絡と後からの詳細報告の二段階に工夫してくれたり、彼らのホウレンソウの質もぐんぐんと向上してきたのです。
報告してくれてありがとう。
連絡してくれてありがとう。
相談してくれてありがとう。
現場の最先端に立っているのは私ではなくメンバーのみんなですから、彼らの声があって初めて私は現場の、お客様の、他社の詳細を知ることができるというものです。
つまり、彼らのホウレンソウがあって初めて、私はマネージャーとして、経営者として取るべき戦略や戦術、会社のこれからの方向性など、必要な戦略を練ることができるのです。
だとしたら、「ありがとう」以外の何物でもありません。
彼らのホウレンソウに対して、感謝のお返しをしなければいけないのは当然です。
メンバーからのホウレンソウが遅い、足りない、物足りない、と嘆いているあなた。
嘆く前に待ってみませんか?
そして、感謝して、それでもどうしてもプラスアルファが欲しかったら、感謝と共にほんの少しばかりのリクエストをしてみるのはどうでしょうか?
メンバーからのホウレンソウは当たり前ではなく、あなたの感謝の気持ちに比例して充実してくるのだと思います。