最近、優秀な社員の退職が続いている。
メンタルヘルス不調で休職者が出た。
このような状況に直面した際、退職や休職にかかるコストをどのように捉えていますか?
「新しい人材の採用費」「休業手当」といった目に見えるコストだけを計算していませんか?
実は、その裏には、組織の生産性を大きく低下させ、成長を阻害する「見えざるコスト」が数多く潜んでいます。
以下に、私がお客様のために実際に試算した2つのコストシミュレーション表を基に、その具体的な中身を解説します。
そして、これらのコストを管理会計の視点で捉え、いかに、人的資本経営へと繋げるかをお伝えします。
退職コストの真実 – 「管理会計」で捉える見えない損失
まず、社員1名が退職した場合のコストから見ていきましょう。
多くの場合、退職にかかるコストとして真っ先に思い浮かぶのは「採用費」でしょう。
しかし、それは氷山の一角に過ぎません。


この表を見ると、採用コスト(145万円)だけでなく、さまざまな「見えざるコスト」が積み重なっていることがわかります。
特に注目していただきたいのは、以下の点です。
- 空白期間の損失(96万円):
退職者の穴を埋めるために、既存社員が残業で業務をカバーするコストです。
これは単なる人件費の増加だけでなく、社員の疲弊やエンゲージメント低下にも繋がります。 - 応援によるパフォーマンス低下(80万円):
退職者の業務を応援した既存社員も、自身の本来業務が疎かになります。
この「見えない負荷」が、新たな機会損失や品質低下を生むのです。 - 生産性ギャップのコスト(75万円):
新しく入社した社員が、元の社員と同じパフォーマンスを発揮するまでには、約6カ月の期間がかかると想定しています。
この期間の生産性ギャップが、実は非常に大きな損失となります。
このように、コストを徹底的に可視化することで、「既存社員の育成はもちろんのこと、離職防止策や組織開発への投資」の必要性について、経営層に対して管理会計の視点から明確に答えることができます。
あなたの会社の「見えざる退職コスト」は、一体いくらになるでしょうか?
ハラスメントによる休職コスト – 表面的なコストのその先に
次に、ハラスメントが原因で社員1名が休職した場合のコストを見てみましょう。
休職と聞くと、「休業手当」の支払いが主なコストだと考えられがちです。
しかし、問題はそれだけではありません。


この表から読み取れるのは、休職者が発生した場合の「見えざるコスト」がいかに甚大かということです。
- 休業手当は氷山の一角(75万円):
企業が支払う手当もコストですが、休職者の業務停止による生産性損失(113万円)の方がはるかに大きいことがわかります。 - 応援コストの連鎖(132万円):
退職時と同様、応援に回った社員の負担が増大し、彼らのパフォーマンスも低下します。 - 見えざるコストの深掘り:
注目すべきは、「チーム心理的影響(24万円)」や「信頼毀損リスク(50万円)」といった項目です。
ハラスメント問題は、当事者だけでなく、チーム全体の士気を下げ、組織の風土やブランドイメージにまで悪影響を及ぼします。
これらのコストは、ただの数字ではありません。
ハラスメント対策やエンゲージメント向上といった施策が、実は企業の将来を守り、成長を促すための重要な「人的資本」への投資であることを示しています。
休職コストを可視化することは、組織の隠れた課題をあぶり出し、改善への第一歩を踏み出すことなのです。
コストを可視化することが、人的資本経営の第一歩
退職や休職は、単なる一社員の問題ではなく、組織全体に大きな「見えないコスト」をもたらします。
これらのコストを「管理会計」の視点で可視化し、定量的に捉えること。
それが、社員一人ひとりを単なる「労働力」ではなく、企業の持続的な成長に不可欠な「人的資本」として大切にする人的資本経営の第一歩です。
あなたの会社でも、この「見えざるコスト」を可視化してみませんか?
今回は「損失コスト」jについて触れましたが、次回は、育成コストと、そのリターンからなる人的資本ROI(投資収益率:人への投資が、どれだけのリターン(利益)を生み出したか)について触れてみたいと思っています。
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