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受講動機がなくってもいい

もうずいぶん昔になりますが、転職した会社から、社員は全員受講するようにと命じられ、ある外部主催の研修に参加しました。
入社前にその話は聞いていましたが、実際、会場へ行ってみると、どうにもその場の雰囲気に馴染むことができず、居心地の悪さを感じました。

「受講動機を教えてください。」
講師の方の問いかけに、皆、順番に、とても前向きなコメントを述べていきます。
私はと言えば、「別に受けたくて受けるんじゃなくて、必須だから仕方なく・・・」というのが本音です。
「せっかくの土日がこのため潰れちゃうし、本当は、研修の中身には興味ない・・・」
心の声が叫びます。

私の順番になった時、正直と言えばそれまでですが、私は何とも後ろ向きなコメントを臆することもなく、堂々と言ってしまいました。
「会社から行けと言われたので来ました。」

苦笑いする講師の男性。
「何か、この講座に期待することはありますか?」
その問いかけにも、
「別にありません。」
とそっけなく答えた私。
本当にふてぶてしく、イヤな受講生だったと思います。

しかしこの私の経験が、今、とても役に立っています。
弊社は企業様からのご依頼で、研修やワークショップのご提供をしていますが、参加者は自ら希望しての方よりも、会社側から指名されて、またはその年次だからと必須で来られる方が大部分です。
その方達の中にはおそらく、当時の私のような気持ちで参加している方もたくさんいらっしゃるでしょう。

もちろん最初のきっかけは自分が望んだわけではない必須であったにしても、その場に参加することが決まった時点で、自らをモチベートして前向きに参加することができたなら、それはとても素晴らしいことです。
しかし私のように、そうしないまま仕方なく参加する人が多いのもまた事実です。

受講態度が悪いよね。
イヤイヤ感がミエミエだね。
研修も仕事の一環なのに、やる気ゼロだな。

こんな声が聞こえてきます。
講師の中には、こういった受講生に対して厳しい指摘をする方もいらっしゃるようです。
けれども私はそうは致しません。
だって、いくら喝を入れたところで、表面的態度を無理矢理矯正することはできても、本当に必要な前向きさにまで導くことは難しいからです。
それに何より、その方達の気持ちが私にはわかります。
だって、私自身がそうだったわけですから。

かつての私のように受講動機が希薄(又はない)人たちに対して必要なこと。
一つは、自ら受講前に動機づけが出来るような何らかの仕組み(仕掛け)をお膳立てしてあげること。
二つ目は、受講後のゴールや目指すキャリアとプログラム内容の関連付けができるよう、進め方を講師側が工夫すること。
三つ目は、これが一番大切なことですが、受講者の前向きな力を信じることです。

それにしても、人間、どんな恥ずかしい経験も、その時には赤面し切りで全く分からなかったとしても、必ず何かの役に立つものですね。
かつての私の大失敗、思いっきり生意気だったりブラックだったりしたことも、今、すべてが役に立っているのですから面白いものです。
それが「姉御」とか「師匠」と受講生の皆さんから呼ばれる謂れなのかもしれないですが。

どんな体験も無駄なものなど何一つない。
研修スタート時点でとても後ろ向きな受講者さんに遭遇すると、昔の自分を思い返し、今の自分のミッションをより強くはっきりと自覚するのでした。

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