「メンバーを信じる気持ちが足りず、時間と余裕を与えることができなかった。自分に慢心があった。」
研修と研修の合間の4か月間をこんな風に振り返った新任マネージャーのTさん。
真摯に自らを振り返るその姿勢に、私はTさんの4か月間にとても関心を持ちました。
「『ここを目指そう』という最終ゴールは設定して共有できていたんですが、いつまでにどこまでという途中途中のゴール設定や細かい目標を決めなかったので、ただできていないことばかり、ゴールまでまだこんなにも遠いということばかりに目が行き、イライラして、メンバーにキツク言ったり、任せたりということができませんでした。」
なるほど!
正直で丁寧に自分自身を振り返っていることに私はとても感心しました。
「そうだったのね。でも、それが『慢心』とどうつながるの?」
「ゴール設定をして共有できた時点で、『自分はちゃんとやっている。上司としてしっかりできている』と思ってしまったんです。まだまだ不十分なのにそれに気がつかず、『マネージャーとしてイケてる』と思ってしまったんです。つまり、慢心していたんです。」
なるほど!!
私はTさんの素直さ、誠実さ、そして自分自身の内面をしっかりと振り返ることができるその内省力にすっかり魅了されてしまいました。
「すごいね。Tさん。そこまでちゃんと自分を振り返ることができているんだったら、何の問題もないね。だって、上手くいかなかったことをちゃんと受け止め、その理由も分析できていて、どうすべきかをもう分かっているんだから、何も問題ないよ。素晴らしい!」
自分はダメだったんです・・・
と、ションボリ振返ったTさんですが、私に絶賛されたので少し面食らった様子でした。
「いいの。いいの。いきなり上手くできた人は、それが悪いとは言わないけど、学びも少ないんだよ。『失敗 万歳!』なんだよ。できなくて、振返って、工夫して、苦労して、それでできるようになった人の方が、遥かに多くのコトを学べるの。実際、Tさんがそうじゃない。もうすでに、いろんなことを学んでる。そうやって自分の事をきちんと見つめることができる人、なかなかいないよ。そのスタンスが既にもう、素晴らしいもの!絶対に良いマネージャーになるに決まってる!!これからも、たくさん失敗して、たくさん振返って、たくさんをゲットしてね。」
ここまでくるとTさんは既に笑っていました。
たくさん失敗しろと言う講師はそうそういないはずですから、彼も笑うしかなかったのかもしれません。
マネジメントにおいて「これは絶対に正解!」という方法はありません。
人によって、環境によって、その時々の状況によって異なるからです。
しかし「これは絶対にダメ!」という方法はあります。
考えて頭でわかるダメもあれば、経験してみてわかるダメもあるでしょう。
経験、つまり失敗してみなければわからないのであれば、どんどん失敗して多くを知った方が良いに決まっています。(もちろんその前提には「素直」「真摯」がなければ失敗からの学び・気づきも浅いものにしかならないのですが。)
そう考えると、失敗がとても愛しく思えてくるのですから不思議です。
失敗 万歳! 経験 万歳!!