発売同時にコンピューターを叩いても予約が取れない
ご指名いただいた添乗員が他の恒例のツアーと被ってアサインできない
自分自身のミスで行程表の時間通りにツアーが進まない
旅行会社時代、トラブルは日常茶飯事。若い頃は特に、自分自身の未熟さ故に失敗もたくさんありました。自分はどんなにきちんと仕事をしているつもりでも、連携ミス、悪天候、事故や災害、暴動(天安門事件とか)など、自分では如何ともしがたい理由で物事がうまく運ばないことはよくありました。
そんな時、事あるごとに、私に口を酸っぱくして先輩が言ってくれたのが「迷った時こそ正攻法」という言葉です。
こんな説明したらお客様は烈火のごとく怒るだろうな。何て言おう・・・。
自分のミスなんだけど、そしたら出入り禁止になるかも。何か良い言い訳ないかな・・・。
状況が好ましくない時ほど、「本当のこと」が言いづらくて言い訳を考えがちでした。特に、お客様にとって「なにそれ・・・」と呆れかえるような内容の時にはなおさらです。
私が暗い顔をしていると先輩が言うのです。
「本当のことを言えばいい。困った時こそ正攻法でいくんだよ。下手な言い訳や嘘は後々自分の首を絞めるよ。罵倒されるかもしれない。土下座しても許してもらえないかもしれない。担当者変更どころか、他社へ切り替えられるかもしれない。でも、命まで取られることはない。小手先の手段に逃げるんじゃない。正攻法でいくんだよ。」
問題が起こってお客様へ説明と謝罪に行かなくてはいけない時、いつも、先輩のこの言葉に背中を押されて出かけたものでした。
すると不思議なものです。命を取られるどころか、すべてのお客様とより一層親しくお付き合いいただくようになっているのです。もちろん、その時は厳しいお言葉を頂き、申し訳なさや悔しさで身体が震えるようなこともありました。それでも、こちらが「正攻法」で向かい合ったお客様は、お客様も私に対して正対していただけるのです。
本当にありがたいことです。これが人と人との付き合い方、誠心誠意とはこういうことなのだとお客様から教えていただきました。
先輩のお陰で、いつもお客様とは真正面から向き合ってきたと自負しています。
しかし、上司やメンバーに対してはどうだったかと問われると、とても正攻法とは言い難い、ごまかしや取り繕いがあった時もあります。
お客様であろうとメンバーであろうと、もちろん家族や友人であろうと、人と人との付き合いは正対してこそ初めてそこに信頼関係が生まれるのは自明の理です。
「迷った時こそ正攻法」
これからも心に深く刻んでいきたい言葉です。