信頼していた幹部の退職を知った瞬間、冷静さを失い、引き留めるつもりが感情的な言葉で関係を壊してしまった。
そんな後悔はないでしょうか。
強い怒りや失望に支配された瞬間、私たちは自分でも意図しない言動に走ります。
冷静になって「なぜあんなことを…」と頭を抱える。
誰もが、一度は経験があるはずです。
「自分の思考と行動はコントロールできる。しかし、自分であっても『感情』はコントロールできない。」
これは、人間に言える真実です。
好き・嫌い・楽しい・ガッカリ。
人間には様々な感情がありますが、とりわけネガティブな強い感情ほど、私たちを予期せぬ行動へと駆り立てます。
そして、感情に支配された状態での意思決定は、平均で30%判断精度が下がるという研究があります。
ある経営者は、怒りに任せて主要取引先への強硬姿勢を取った結果、年間売上の15%を失いました。
翌日冷静になって後悔しても、取り返しはつきませんでした。
「視点を変えよう」と言われても動けない理由
感情を直接コントロールすることはできなくても、思考と行動を変えることで視点のベクトルを変えることはできます。
しかし、これは頭では分かっていても、実践は簡単ではありません。
強烈な怒りがわき上がっている時、罪悪感や失望のどん底にいる時に、「視点を変えてごらん」と言われても、 「それができたら誰も苦労しないんだよ!!」 と、かえって反発や落ち込みを深めてしまう。
これはごく自然な反応です。
ネガティブ感情に飲み込まれている時、人は「考える・思う」を頭の中だけで延々と繰り返します。
目にも耳にも触れない領域で、自分の中だけで一生懸命になってしまうのです。
だからこそ、一度その渦を外に出す必要があります。
そして、その最も効果的な方法が「書くこと」なのです。
突破口は「書く→見る→聞く」の循環
ノートに、思いつく限り、手当たり次第に書き殴ってください。
イライラ、モヤモヤ、焦燥感、無力感、後悔…出てくるものを全部です。
そして書いたら、大きな声で読む → 自分の耳で聞く。
・アウトプット(書く) ・インプット①(見る) ・インプット②(聞く)
この循環によって、ネガティブ感情が内側と外側をぐるりと回り始めます。
すると、「イライラの犯人はこれだったのか」「なんだ、考えすぎていたかも」と気づくケースは本当に多いのです。 問題の本質が急に姿を現すこともあります。
なぜこの循環が効くのか。
脳科学の知見では、感情を言語化する行為そのものが、感情を司る扁桃体の活動を抑制することが分かっています。 さらに、「書く」という身体運動、「見る」という視覚情報、「聞く」という聴覚情報
複数の感覚を動員することで、脳は感情から「観察対象」へとモードを切り替えます。
つまり、この循環は感情の暴走を止め、理性的な脳を再起動させるスイッチなのです。
手書き・デジタル・音声:どう書くか
では、具体的にどう書けばいいのか。
最も推奨するのは、ノートへの手書きです。
PC入力は整理・保存には最適ですが、感情の吐き出しには向きません。
乱れた文字、はみ出した線、強弱のある筆圧
これらすべてが感情の痕跡として紙に刻まれます。
全体を俯瞰し、視覚で捉える点でも、手書きは圧倒的に効果的です。
ノートはそれを丸ごと受け止めてくれる器なのです。
ただし、書く余裕すらない時は、スマホの音声入力でも構いません。
私自身、書く余裕がない時はスマホの音声認識に思いを吹き込みます。
後で必ず、文字として見て、吹き込まれた自分の声を聞きます。
すると、 「なんでこんなこと思ってたんだろう」「そこまでの問題じゃないのに、ちょっと熱くなりすぎたかも」 と、冷静に自分を客観視できます。
重要なのは「後で必ず見る・聞く」こと。
この二次的なインプットが、客観視のスイッチを入れるのです。
「見る・聞く」の力は、思っている以上に大きいのです。
「そんな時間はない」と思われた方へ
「そんな時間はない」と思われたかもしれません。
しかし、感情に振り回されて下した誤った判断を修正するコストを考えてください。
・取引先との関係修復に費やす時間
・社内の信頼回復のための対話
・誤った戦略の軌道修正
5分のノート時間は、その後の5時間を救います。
さらに、書く行為は「思考の整理」も同時に行います。
多くの経営者が、書くことで「本当の問題」が見え、意思決定の質が上がったと証言しています。
リーダーこそ、自分のご機嫌を取り戻す技術が必要
経営者・管理職の孤独は深い。
部下には弱みを見せられない。
同僚はライバル。
配偶者には心配をかけたくない。
誰にも相談できないまま、感情は内側で膨れ上がっていく。
だからこそ、「書く」という行為が意味を持ちます。
ノートは、あなたの唯一の信頼できる相談相手になれるのです。
誰にも見せる必要はありません。
誰にも評価されません。
ただ、あなたの感情を受け止め、客観視させてくれる
それだけで十分なのです。
自分のご機嫌を自分でつくれることは理想です。
しかし感情そのものはコントロールできません。
それは人間らしさそのものであり、嘆く必要はありません。
直接コントロールできないなら、間接的に扱えばいい。
その最もシンプルで効果的な方法が、
書き殴る → 見る → 読む → 聞く
たったこれだけです。
経営者・管理職は、組織の感情の受け皿になります。
部下の不安、顧客のクレーム、株主からのプレッシャー
あらゆるネガティブ感情が集まる立場です。
だからこそ、自分の感情を扱う技術は「あると便利」ではなく、必須のスキルなのです。
感情を扱えるリーダーは、離職率が平均20%低いというデータもあります。
自分が整っていなければ、チームを導くことはできません。
自分のご機嫌を自分で取り戻せるリーダーは、組織全体に安心と安定をもたらします。
ネガティブな感情に支配された時、まずノートを開いてください。
その「やっかいな相手」を扱うためのヒントは、すでにあなたの中にあります。
『組織を強くする実践知』
最新記事をメールでお知らせ!
✔ 無料
✔ いつでも解除OK
こちらから登録してください!
リーダー育成・組織開発の最前線から、あなたのビジネスを加速させる実践知を毎日お届けします。

