組織診断や360度評価の結果を見せられる時、チームを預かるマネージャーとしては、まるで自分の通信簿を見せられた気分になるものです。
まずまずの結果であればなんとなく一安心し、そうでなければ、自分自身に×をつけられたようで、平静を装うことすら難しいかもしれません。
私個人は、組織診断も360度評価も、万能薬として好んでお勧めすることはありません。
なぜなら、診断結果は薬になる一方で、「安易な犯人探し」や「建設的な対話の欠如」を招き、組織の士気を下げる毒にもなり得るからです。
数字だけではわからない本当に知らなければならないことは、直接、個別丁寧な対話を持たなければ決して知ることはできません。
しかし、大規模組織の場合、サーベイによる全体像の把握は現実的な手段です。
ですから、診断という手段を真っ向から否定するものではありません。
スコアが「普通」であることの裏側を読む
何かしらの診断が職場で実施され、その結果を受け取った時、リーダーはその「事実」をどのように受け止め、消化し、戦略的な打ち手へと活用していけば良いのでしょうか。
診断結果は数値化され、全回答者合計の平均で示されます。
例えば以下の場合を考えてみます。
| チーム | 評価分布 | スコア |
| Aチーム | 1点(悪い)3人、5点(良い)2人 ブレが大きい | 3.1点 |
| Bチーム | 3点(普通)7人 「普通」に集中 | 3.1点 |
両チームともスコアは3.1点、「普通」です。
しかし、その中身は全く異なります。
- Aチームは、良いと評価している人もいれば、深刻な問題を感じている人もいます。
この社内の分断を見逃すわけには決していきません。 - Bチームの「普通」は、多くの場合、非常に曲者です。
真面目に答えても無意味という諦めや、悪くつけてとばっちりが来ることを恐れた「本音の隠蔽」かもしれません。
診断結果で大切なのは、表出された数字ではなく、その数字の裏側に隠された「現場の真実」です。
リーダーの真価を問う「葛藤を乗り越える器量」
診断結果に一喜一憂する必要は全くありません。
本番は、診断結果が出たそのあとです。
「結果を受けて、どうするか」が何よりも大切なことであり、それこそが、リーダーの真価を問われるポイントです。
サーベイの結果は、理想を目指していくための大切なヒントです
。そのヒントを手に、リーダーとして取るべき最初の一歩、そして最も重要な行動とは何でしょうか。
それは、結果を真摯に受け止め、「対立を恐れず建設的な対話へと昇華させる」ことです。
- 個別丁寧なヒアリングを通して、隠された「真実」に迫る「聞く力」。
- 少人数での改善ミーティングをファシリテートし、現場の知恵を引き出し、自律的な変革を促す組織開発のプロセスを設計すること。
- 時にはリーダーとして、メンバーの不満や批判のサンドバッグになると意を決し、感情的な衝突(葛藤)を受け止める器量。
これらは、単なる作業ではありません。
組織を成長へ導くための「対話のデザイン」であり、エグゼクティブコーチングなどを通じて磨くべき資質です。
診断結果は、決してあなたの人としての価値を評価するものではありません。
「全体からはそう見えている」客観的な事実と心にとめ、暴走することなく、悲嘆にくれることもなく、ただ淡々と、目指す理想に向かって進んでいきましょう。
この「数字の裏側を読む力」と「対話の場を設計する力」こそが、サーベイを戦略的な武器に変える鍵なのです。
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