私たちは失敗の振り返りは行っても、成功の振り返りを疎かにしてしまう癖があります。
失敗の振り返りは言わずもがな大切です。
しかし成功の振り返りは、もしかしたらそれ以上に大切なのではないかと思います。
ところが、×のついたところを復習する仕方は子供のころから行ってきても、〇のついたところを振り返る習慣がなかったせいか、成功の振り返り方があまり上手ではない人が多いように感じます。
先日の研修で「ワオ!ストーリー!」を発表してもらった時のことです。
Aさんのワオ!ストーリーは「年配のお客様から食事をご馳走になることが多くて嬉しい」というものでした。そこだけ聞くと、「美味しいもの食べられてラッキー!」と単純な話に終わってしまいます。
これは「成功を振り返る」良い事例だと思い、全員が聞いている中でAさんにいくつかの質問をしてみました。
①「いきなり食事を誘われるようになったのですか? 何かきっかけがあったのですか?」
これは、成功に至るまでの行動や考え方、周囲で起きたことなどの「事実」を洗い出すことを目的としています。
Aさん:「最初からではありません。たまたまお昼前に訪問した時に、どうせお昼ご飯を食べるから一緒にどうかとご馳走になったのが最初でした。それをきっかけにお客様と仲良くなってきて、ご馳走になったり、時にはご自宅へ招かれて夕飯を頂いたりして可愛がっていただくようになりました。」
②「ご自宅に食事を誘っていただくようになるまでお客様と仲良くなれたのは、どうしてだと思いますか?」
これは、①を踏まえて成功に大きく影響を与えた要因を探し出すことを目的としています。
Aさん:「娘のような年齢なので可愛がっていただいているのかと。親切にしていただいているという気持ちもあるので、そのお客様には特に気持ちが入ります。お食事の時は仕事のことは忘れて、色々な楽しい話や面白い話をして笑っています。そのお客様と話していると、もっと頑張ろうと思うし、私もそのお客様のことが好きだし、もっとお役に立ちたいとも思います。」
③「たくさんお話してくれた中で、お客様とすごく仲良くなれた一番の要因となるAさんの『考え』と『行動』は何だと思いますか?」
これは、成功要因を導いたその人の「考えと行動」を導き出すことを目的としています。
Aさん:「プライベートの話をたくさん聴いてもらったり、聴いてあげたりしたことかな。もちろん仕事の時はちゃんと仕事の話をしていますが、お食事の時は一切、仕事の話はしませんでした。いつも仕事の話しかしないのはイヤらしいじゃないですか。その方のご厚意や親切にお応えするには、仕事の話をするだけでなく、人として向き合うことが必要かなと思って。それには、自分のこともちゃんと話すのは大切な事かなと思いました。」
④「今回のワオ!ストーリー!ではお客様からお食事をご馳走になったことが嬉しいと発表してくれましたが、そこからAさんが学んだことは何かありますか?」
これは、振り返りによって今回学んだ「成功するための考え方を整理=自分のサクセスパターンにする」ことを目的としています。
Aさん:「結局、人と人とのつながりが大切だと思いました。仕事の話しかしないのは寂しいし、そういう営業にはお客様もなかなか心を開いて下さらないのかなと。まずお客様と仲良くなる、そのためには自己開示も恥ずかしがらずにすることは大切だと思いました。なかなか仲良くなれないお客様とはお仕事の話しかしていないと思いますし・・・。人と人との付き合いがお客様とできるようにしようと思いました。」
以上が、私が考える「成功の振り返り」です。
たまたま、偶然、〇〇さんのお陰で、などで終わらせないことです。
「たまたま」や「偶然」「〇〇さんのお陰」であっても、それらを招いた要因や、それらが起きた時に考えた事や取った行動をしっかりと振り返ることが大切です。
① 成功に至るまでの行動や考え方、周囲で起きたことなどの「事実」を洗い出す
② ①を踏まえて成功に大きく影響を与えた要因を探し出す
③ 成功要因を導いたその人の「考えと行動」を導き出す
④ 振り返りによって今回学んだ「成功するための考え方を整理=自身のサクセスパターンにする」
ポイント1:その人自身の「考え方」と「行動」にフォーカスします。何故なら、自分が直接コントロールできるのは自分自身の「考え方」と「行動」のみだからです。それ以外(上司の支援、お客様の行動、環境要因等)を成功要因として落とし込んでしまっては、自分でコントロールできるサクセスパターンではなく相手依存のものとなってしまいます。あくまで最初の質問からその人の「考え方」と「行動」にフォーカスし、そこからブレないように絞り込んでいくことがポイントです。
ポイント2:仮に、最大の成功要因が「上司の助言」だったとして、その助言を引き出すに至った背景にある行動、たとえば「上司にアドバイスを何度も求めた。日ごろから相談していた。この仕事への熱意を普段から語っていた。」などを③でしっかりと抽出することが大切です。①②を行っている人は沢山いますが、大切なのは③と④です。しっかりと③④を行いましょう。
自分で振り返るのはもちろんのこと、上手に振り返ることができないメンバーには上司のあなたが質問をしてあげてください。
成功の振り返りは、すなわち、その人のラッキーパターンを構築していくことに他ありません。
失敗の振り返りも大切ですが、成功の振り返りを私たちはもっともっと大切にして良いと思います。