管理職にとって最も難しい場面の一つは、部下が大きな失敗をしたときです。
失注してしまった。
お客様からお叱りをいただいた。
プロジェクトの足を引っ張った。
大きな不具合を招いてしまった。
部下が自信を失い、次の一歩を踏み出せずにいる。
そんなとき、上司であるあなたがどう対応するか。
この局面での判断が、部下の成長スピードも、組織の学習能力も、そしてあなた自身の管理職としての真価も決定づけます。
多くの上司が陥る3つの誤解
部下が失敗して落ち込んでいるとき、多くの上司は次のような判断をします。
「自信を失っているので、少し様子を見てから次に進もう」
「チャレンジが早すぎたかもしれない。もう少しできるようになってから再挑戦させよう」
一見、部下を思いやる優しい判断に見えます。
しかし、これらはすべて間違いです。
なぜなら、失敗で失った自信は、時間では回復しないからです。
様子を見ても、待っていても、部下の自信は戻りません。
むしろ、時間が経つほど失敗の記憶だけが固まり、次への恐れが増幅していきます。
これらの判断は、一見優しいようで、実は部下の学習機会を奪い、次の挑戦を妨げるNG行動なのです。
失敗からの回復の原則:行動でしか自信は戻らない
失敗は、挑戦したからこその結果です。
挑戦しなければ失敗はありません。
そして、失敗で失った自信は、それを克服することでしか取り戻せません。
これは、スポーツの世界を見れば明らかです。
滅多打ちされて大量失点したピッチャーが、どうやって自信を取り戻すのか。
それは、次の登板で相手打者を抑えることでしか実現しません。
ベンチで休養しても、ブルペンで投げ込んでも、失った自信は戻らない。
マウンドに立ち、実際に打者と対峙し、抑える経験をすることでしか、真の自信回復はないのです。
ビジネスでも同じです。
失敗した商談の次の商談で成果を出す。
ミスをしたプロジェクトの次のプロジェクトで貢献する。
「次に成功する」という体験こそが、唯一の自信回復ルートなのです。
間違っても、次の挑戦を妨げるようなことを行ってはいけません。
上司がすべき2つの実践行動
では、失敗した部下が次に向かえるよう、上司のあなたがすべきことは何でしょうか。
それは、慰めることでも、時間を置いて様子を見ることでもありません。
やるべきことは、次の2つです。
①失敗を正しく振り返る
正しく振り返らなければ、また同じことの繰り返しが起こります。
逆に、正しく振り返ることができれば、部下は次への行動イメージを持てるようになります。
振り返りで重要なのは、感情論に終わらせないこと。
「頑張ったね」「仕方なかったね」という慰めではなく、事実→要因→改善策の順で整理させることです。
- 何が起きたのか(事実)
- なぜそれが起きたのか(要因)
- 次はどうすればいいのか(改善策)
このプロセスを丁寧に行うことで、部下は「なぜ失敗したか」を理解し、「次はこうすればいい」という具体的な行動イメージを持てるようになります。
特に、失敗がとても大きなもので、次への恐れが強く伴っている時こそ、丁寧に丁寧に振り返りを行います。
そして、次へのチャンスのイメージトレーニングを一緒に行うのです。
※振り返りの具体的な手法については、関連記事「正しい振返りをしていますか?」をご参照ください。
②次のチャンスをなるべく早く用意する
振り返りができたら、次にすべきは早く次のチャンスを用意することです。
この「早さ」が極めて重要です。
なぜなら、時間が経つほど、失敗の記憶と恐れが部下の中で固まってしまうからです。
早く次の機会を与えることで、「成功のイメージ」を持たせ、具体的な行動につなげることができます。
大きな失敗をした部下に、次のチャンスを用意する。
これは簡単なことではありません。
上司としての、あなたの度量の大きさが試される場面です。
「また失敗したらどうしよう」
「周囲の目が気になる」
「自分の評価に影響するのでは」
そんな不安が頭をよぎるかもしれません。
しかし、ここであなたが部下に次のチャンスを与えられるかどうか。
それは、あなたにとっても成長のまたとないチャンスなのです。
部下が失敗をしたら、それは上司としてのあなたに成長の機会が用意されたと考えましょう。
そして、部下の次なる挑戦のチャンスをしっかりと準備するのです。
失敗を組織の学習資産に変える
人の成長は、逆境の時こそ大きくなります。
部下の失敗を失敗で終わらせず、経験と智慧に変えて成長の起爆剤にするか。
それとも、失敗のまま終わらせて、部下の挑戦意欲を削ぎ、組織の学習機会を失うか。
この分かれ道は、上司であるあなたの考え方と行動に大きく関わっています。
上司の姿勢が、部下の挑戦意欲を決めます。
上司の対応が、組織の成長速度を決めます。
そして、上司の器が、チーム全体の学習能力を決めるのです。
失敗は避けられません。
しかし、失敗をどう扱うかは選べます。
今週、あなたのチームで過去3ヶ月の失敗事例を1つ選び、その後のフォローが適切だったか振り返ってみてください。
そして、もし今、失敗から停滞している部下がいれば、来週中に次のチャンスについて対話する時間を設けましょう。
部下の失敗は、あなたの管理職としての真価が試される瞬間であり、同時に、組織全体を強くする絶好の学習チャンスなのです。
『組織を強くする実践知』
最新記事をメールでお知らせ!
✔ 無料
✔ いつでも解除OK
こちらから登録してください!
リーダー育成・組織開発の最前線から、あなたのビジネスを加速させる実践知を毎日お届けします。

