少し前になりますが、ある外食チェーンから、「月次決算の早期化」のご相談を受けました。
当初は翌月25日頃だった月次の締めが、税理士法人のサポートにより15日にはなりました。
しかしそれ以上は早くならず、「業務改善」としてどう取り組めばよいかというご相談でした。
そもそも、月次決算の早期化はなぜ、必要なのでしょうか?
月次決算は、何のために存在するのでしょう?
会計は企業の成績表です。
その組織が健康か、病気の兆候が隠れていないか、多少の無理に耐えられる状態か、
それらを数字という客観的な視点から把握できるのが会計です。
競争が殆どない、変化もほとんどない、今のままやっていれば安泰。
そんな環境であれば、締めが翌月末でもそれより遅くても問題はないでしょう。
しかし、そんな企業は、世の中、どこを探しても存在しません。
変化が激しく、ほとんどの業界がレッドオーシャンで戦っている今、
月次決算が遅れることで生じる問題は非常に深刻なのです。
・自社の状態をリアルタイムで正しく把握できない。
・課題への有効な打ち手が遅れ、後手に回る。
・結果的にムダなコストが増える。
・状況に対する判断が常に「感覚頼り」になる。
つまり、月次決算の遅れは、企業の意思決定を遅らせ、
存続に直結するリスクをはらんでいるということです。
さて、そのことを、企業で働く人達はどれくらい理解しているでしょうか?
経理メンバーは理解しているかもしれません。
しかし、現場はどうでしょうか?
月次の早期化は、経理分だけで完結するものではありません。
正確でタイムリーな現場からの報告がなければ、
経理がどれだけ頑張っても限界があります。
一方、現場はこんな風に思っているかもしれません。
・現場は忙しいのに、また数字の催促だ。
・経理の仕事なんだから、経理で頑張れよ。
・どうせ、PLで成績をつけたいだけだろう。
こうした感情が背景にある中で、
「早く入力して」「〆切守って」と伝えるだけでは、
現場の協力が得られるはずはありません。
しかし、現場の協力が、会社の意思決定に大きく影響しており、
それが自分達現場の支援や対策、会社の未来に大きな影響を与えると理解できたらどうでしょう?
現場は進んで協力してくれるはずです。
先の外食チェーンの経理マネージャーは、「早く入力して!」と
現場店舗のお尻を叩く代わりに、
「月次の早期化は店舗支援のため」と、その目的を説いて回りました。
その結果、停滞していた締め日はたった2か月で、
翌月5日で締まるようになったのです。
行ったことは、仕組みの再設計でも人員増でもなく、
現場の協力を得るための、「伝え方」の見直しでした。
業務改善というと、「こうした方が良いよね」「こうするべきだよね」と
理想像やあるべき論から始まりがちです。
しかし、それだけでは人は動きません。
・それが自分たちの仕事に、どんな意味を持つのか。
・やらなかった場合、どんな支障があるのか。
・なぜ、自分達はそれをした方が良いのか。
「やること」を伝えるのではなく、「なぜやるのか」を丁寧に伝え、
行動してほしい人たちの理解を得ることが何よりも大切な事です。
私が知る限り、
月次決算が遅い会社で業績好調という企業は殆ど見受けません。
逆に、低迷している会社は月次も遅い傾向があります。
なぜそれをするのか。
その目的をどのように伝えるかの工夫をするだけで、現場は勝手に動き始めます。
それは、「意味をどう伝えるか」というあなたの言葉にかかっているのです。
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