評価制度とは、「処遇を決めるためのもの」「序列をつける仕組み」というイメージを持っている人は多いようです。
しかし本来、評価は人を選別するためのものではありません。
人を育て、組織の未来をつくるための仕組みです。
評価の仕組みが変わると、現場の行動、上司と部下の会話、挑戦への姿勢が変わります。
つまり、評価制度は「育成文化」を司る仕組みなのです。
なぜ評価制度が形骸化するのか
では、なぜ多くの評価制度は「あるのに機能しない」状態になるのでしょうか。
多くの企業で評価制度がうまく機能しない理由は、「基本思想」が曖昧なまま設計され、運用している点にあります。
「成果を出した人を上に」「できなかった人を下に」
この発想のまま制度をつくると、評価は過去を裁く行為になり、管理職もメンバーも「評価を下げない行動」を選ぶようになります。
なぜなら、人は、評価の仕組み通りに行動するからです。
結果、挑戦は減り、無難な行動だけが残る。
これは評価制度の問題というより、評価をどう定義しているかの問題です。
加点方式がチャレンジを生む理由
評価制度は、人の行動を止めることも、前に進めることもできます。
その分かれ目は、どこにあるのでしょうか。
その最も重要な分かれ目は、減点方式か、加点方式かです。
減点方式では、「できなかった点」を探します。
この前提に立つと、人は失敗を避け、挑戦しなくなります。
一方、加点方式は出発点が違います。
まず「期待通り役割を果たしている状態」を肯定する。
そのうえで、「どんな工夫をしたか」「どんな成長があったか」「どこまで踏み込んだか」を見ていきます。
ここで評価されるのは、成果の大小そのものではありません。
成長のプロセスです。
「失敗したからマイナス」ではなく、「挑戦したからプラスの余地がある」。
このメッセージが制度に組み込まれているかどうかで、現場にチャレンジが生まれるかが決まります。

「期待通り」と「期待以上」を分ける基準
もう一つ重要なのは、「期待通り」と「期待以上」をどう分けるか、です。
成果の大小だけで判断すると、難易度や役割の違いによって評価は簡単にブレます。
そこで基準になるのが、影響の質と範囲です。
・自分の役割を果たした状態が「期待通り」
・一歩踏み込み、周囲に良い影響を与えた状態が「期待以上」
この基準があることで、評価は「頑張ったかどうか」ではなく、どこまで価値を広げたかを見るものになります。

制度設計が文化をつくる
評価制度は、運用で何とかするものではありません。
設計思想の時点で8割が決まります。
よくある評価制度に少し手を加えただけでは、一貫性は生まれません。
評価者ごとに判断が揺れ、結局「使えない制度」になってしまいます。
「何を肯定するのか」「何を評価するのか」「どんな行動を増やしたいのか」
この思想が明確な制度は、自然と育成文化をつくっていきます。
どんな評価制度を選ぶかは、どんな人を育てたいかの宣言です。
序列をつくる会社なのか。
成長を積み重ねる会社なのか。
評価制度は、単なる人事の仕組みではありません。
文化をつくる経営の意思決定そのものです。
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